第1部:総論
座談会紙上参加:住友化学工業・吉田元二氏
第2部:業界動向
- ソニー・テクトロニクスが分子モデリングCACheのパーソナル版
1992.10.01−ソニー・テクトロニクスは、米国CACheサイエンティフィック社が開発したコンパクトな分子モデリングシステム「パーソナルCAChe」(商品名)をきょう1日から受注開始する。三次元で分子構造を組み立てるための分子エディターとフラグメントライブラリー、および分子力場法計算プログラムを内蔵しており、分子の安定配座の探索などに威力を発揮する。同社では新発売に合わせ、開発元と歩調をとって全世界でのキャンペーンセールを日本でも展開。大幅な値引きを実施し、基本構成の「パーソナルCACheイノベーター」(定価91万8,000円)を58万2,000円で、拡張ヒュッケル法の計算機能と可視化システムを加えた「パーソナルCACheイノベータープラス」(同183万7,000円)を116万3,000円で提供していく。また教育機関向けには「同プラス」を22万6,000円で販売。
- サイエンスハウスが国産CCS製品を集めて代理販売を開始
1992.10.14−独立系ソフトウエア会社のサイエンスハウス(本社・東京都文京区、飯箸泰宏社長)は、国内で開発されたCCS(コンピューターケミストリーシステム)ソフトウエアを幅広く集め、一括して代理販売を行う新事業を11月から開始する。テクノシステムや情報数理研究所など中・小規模のソフト会社のほか、NECや富士通など大手コンピューターメーカー製のCCSソフトについても販売代理店契約を締結しつつあり、11月には10社程度のソフトを品揃えする計画。同社は、分子モデリングシステム「MOLDA」(商品名)など独自のCCS製品群を擁し、すでに高い実績をあげているが、他社製品を含めてラインアップを拡充することで販売効率の向上と事業規模の拡大を図る。また、CCSの総合販社として販売面を担うことで、中小の国内CCSベンダーを活性化する狙いもある。
- 富士通と呉羽化学がANCHORのUNIX版を開発、計算化学の技術進歩反映
1992.10.16−富士通と呉羽化学工業は15日、コンピューターに不慣れな一般の化学者や実験化学者が直接利用できるように操作性を高めた新しい分子設計支援システム「ANCHOR II」(商品名)を共同開発し、販売・出荷を開始したと発表した。両社は1984年からCCS(コンピューターケミストリーシステム)の共同開発を進めており、1986年には初代の「ANCHOR」を製品化している。今回の新システムは、この6年間の計算化学領域の技術進歩を取り込むとともに、オープンシステム、UNIXへの本格対応を図った。富士通のワークステーションSファミリーをはじめとするSPARCマシン上で利用でき、ソフトウエア価格は800万円。今後3年間で200システムの販売を見込んでいる。
- 米MSIが基盤技術のケミストリーバックプレーンをオープン化、標準CCS環境を狙う
1992.11.17−米国の大手CCS(コンピューターケミストリーシステム)ベンダー、モレキュラーシミュレーションズ社(略称・MSI、マイケル・J・サヴェッジ社長)は、CCS分野の標準フレームワークとなる可能性を秘めた“ケミストリーバックプレーン”をオープン化する。これはオブジェクト指向技術を用いて開発されたフレームワークソフトで、同社の多数のCCS製品群を協調動作させる統一基盤であるとともに、オブジェクト指向型の開発環境でもある。同社では、外部のソフトウエア開発者に“ケミストリーバックプレーン”の情報を公開。このフレームワーク上で動作するCCSソフトを幅広く開発・移植してもらう作戦だ。来年第1四半期から開発環境を提供していく。すでに、大手のCCSベンダーとライセンス供与で交渉中とも伝えられており、今後が注目されるところ。
- 仏フラマソフト+CSIが複合材料解析CAEシステムを本格販売
1992.12.01−フランスのCAE大手、フラマソフト+CSI社の日本事務所(ベノア・プラデリ所長)は、複合材料の専門解析ソフトウエア「COMPOSIC」(商品名)を来年に向けて本格的に販売開始する。強化プラスチック、ガラス・ポリエステル、カーボン・エポキシ、カーボン・カーボンなど各種材料特性を考慮し、その構造体としての機械的性質を精密にシミュレーションできる。とくに材料同士の剥離など、劣化が起こりやすい局所的なエッジ部分の解析が可能な点がユニークな特徴。HPなどのUNIXワークステーションで利用でき、ソフト価格は年間レンタル料で500万円から。
- クレイ・リサーチが最先端の計算化学理論を適用するACTプロジェクト
1992.12.09−スーパーコンピューター最大手の米国クレイ・リサーチ社は、このほど“ACT”(アドバンスト・ケミストリー・テクノロジー)プロジェクトを打ち出した。スーパーコンピューターではじめて実現可能となる最先端のCCS(コンピューターケミストリーシステム)ソフトウエアを開発、来春製品化する予定の「UNICHEMバージョン2」(商品名)に盛り込む。計算化学理論として、密度汎関数法(DFT)を大幅に拡張し、計算速度と解析精度を飛躍的に高めるとともに、商用システムとして初めて量子分子動力学法を提供する。最近のRISC(縮小命令セットコンピューター)プロセッサーの急速な性能向上により、かつてはスーパーコンならではだったCCSの多くがワークステーション上で利用可能になりつつある。今回のACTプロジェクトは、あえて複雑な化学計算の商用化に挑戦することで、スーパーコンの存在意義を強調する狙いがある。先端的な研究活動のためには、依然スーパーコンが不可欠であることを訴えていく。
- 東レシステムセンターがマック版の低価格CCS「Nemesis」を発売、英OML製品
1992.12.11−東レシステムセンターは、アップルのパソコン、マッキントッシュ(マック)で利用できる本格的な分子モデリングシステム「Nemesis」(商品名)の機能強化版の上市にともない、来年3月末までディスカウントキャンペーンを展開する。これは同社が国内総代理店を務めている英国オックスフォードモレキュラー社(OML)の製品で、マッキントッシュの操作性を生かした使い易さが特徴。これを20万円を切る低価格で提供する。国内でも最近、マック版のCCS(コンピューターケミストリーシステム)に人気が集中しているが、手頃で本格的な分子設計支援システムがほかにないことから、同社では期間中に100本の販売を見込んでいる。
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