富士通がWinMOAC2.0を発売
海外展開も本格化へ
1998.04.22−富士通は、パソコンで利用できる分子軌道法ベースのコンピューターケミストリーシステム(CCS)である「WinMOPAC」(商品名)の最新版バージョン2.0を開発、きょう24日から出荷を開始する。計算機能の強化で扱える分子の範囲を大幅に広げるとともに、ネットワーク利用やマイクロソフトオフィス製品との連携など使い勝手も向上させた。ウィンドウズ95およびNT上で動作し、価格は10万円(教育機関向けは5万円)。発売後1年間で1,000本を出荷したバージョン1.0の実績をテコに、海外市場も含めて2年間に1万本の販売を見込んでいる。
WinMOACバージョン2.0は、心臓部の計算化学エンジンを最新のMOPAC97に更新し、遷移金属を含む分子も計算可能となった。また、富士通研究所が開発した分子の励起状態を計算できるMOS-Fバージョン4.0を新たに組み込んだ。1ギガビット対応のエキシマレーザーレジスト材料の開発などで社内で成果をあげたソフトで、光材料設計などに応用できる。
最新版では、これらの計算処理をバックグラウンドで実行できるため、パソコンで分子のモデリングや計算の制御を行い、実際の分子計算をネットワーク上のサーバーに分担させることも可能である。
MOPAC97については、開発者のJ.P.スチュワート博士との契約により富士通が版権を所有しているが、今回からソースコードを添付し、プログラムの中身をオープンにすることにした。世界中の研究者と協力してプログラムの継続的な発展を図っていく作戦だ。
一方、同社では今回の機能強化で世界に通用するソフトに仕上がったとし、海外での販売に本格的に着手する考え。富士通九州システムエンジニアリングとその子会社のFQSポーランド、サンノゼを本拠とする富士通システムビジネスオブアメリカといったグループ企業を利用するほか、CCS事業で提携している米ケンブリッジソフト社をはじめ、数社のCCSベンダーを通じて販売を行う。
国内では、化学産業以外にも自動車、エレクトロニクス、精密機械など幅広い分野で各種の材料設計に使われており、医薬分野が中心になっている米国CCS市場に対してユニークさを訴えていく。米国での価格は800ドル(教育向け400ドル)。