日本法人を完全子会社化、代理店網再編で対日戦略を強化

MSI:サイード・ザラビアン社長インタビュー

 1999.05.18−7年間続いた帝人との合弁を解消し、日本法人を100%子会社化した米国のコンピューターケミストリーシステム(CCS)最大手ベンダー、モレキュラーシミュレーションズ社(MSI)のサイード・ザラビアン社長がこのほど来日、本紙とのインタビューに応じ、新しい対日戦略などを明らかにした。「以前は本社の意向を完全に反映させることは難しかったし、代理店のサポートでも問題があった。今後は、我々自身が日本のユーザーと直接対話し、日本からの要求をきめ細かく吸い上げたい。日本法人はMSIのアジア太平洋本社として機能の充実を図るとともに、親会社である米ファーマコピアのビジネスも徐々に展開していく」などと語った。

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 MSIは昨年2月にコンビナトリアルケミストリー技術などを得意とする創薬ベンチャー、ファーマコピア社に買収された。

 「この1年で合併はスムーズに進んだ。MSIと統合されたことで、ファーマコピアのビジネスは、@ソフトウエア販売A当社が保有している530万化合物のライブラリーをベースにしたライセンス提供B特定テーマに関する受託研究サービスC我々独自での新薬開発事業−の4つに再編成された。MSIは1番目の事業を担当しており、全売り上げの3分の2を占めている」

 「MSI自身にとっても、合併によってキャッシュフローを改善できたことが大きい。合併前は1,500万ドルだった現金が、合併後は8,000万ドルに増えた。この資金がなかったら、帝人から日本法人を買い取ることはできなかった」

 今回、販売代理店を菱化システム一社に絞った。

 「2年間、検討してきた結果だ。以前は競合しあう4つの代理店をサポートするだけで手一杯で、ユーザーに直接接することができないのが問題だと思っていた。代理店を1社にしようと決めたのは1年前だが、最終的にはここまで時間がかかってしまった」

 「菱化システムをパートナーに選んだ理由は、三菱化学の情報事業会社として内外の大学や研究機関とのコネクションが豊富だという面もあるが、何よりサイエンスを大切にしたいという考え方で一致できたことが大きい。ユーザーからみても、情報がシングルソースとなり、サポートレベルも均質化されるのでメリットが大きいと思う」

 医薬品中心のファーマコピアの傘下となったことで、材料設計CCS製品の行く末を懸念する声がある。

 「まったく心配いらない。MSIとしては現在、医薬系が6割、材料系が4割という比率だが、それはユーザー業界である医薬産業の調子が良いためだ。私自身は、材料系CCS市場のほうが将来的には有望だと思っている。なぜなら、身の回りをみれば理解できると思うが、我々の生活はマテリアルサイエンス製品に囲まれており、ライフサイエンス製品は救急箱の中だけだからだ。実際、現在のユーザーの40%は医薬系・材料系の両方の製品を使っており、我々が材料系CCSを軽視することはありえない」

 ファーマコピアの他の3つの事業は、日本で推進しないのか?

 「2番目のライブラリーのライセンスビジネスについては、今年末ぐらいには日本で始めていきたいと考えている。ただし、営業ルートはまだ未定だ。今回、日本法人を完全子会社化したことで、将来的にはMSI(日本)ではなく、ファーマコピア(日本)として活動していく可能性はある。