MSIの結晶多形コンソーシアムに武田薬品工業が加入
医薬品結晶の安定性・溶解性などを予測
2000.05.22−コンピューターケミストリーシステム(CCS)大手ベンダーである米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)の「ファーマシューティカル・デベロップメント・コンソーシアム」(PDC)に、日本企業として初めて武田薬品工業が加入した。医薬品の候補化合物の結晶多形やそれらの特性予測を行うソフトウエアを確立するためのコンソーシアムで、医薬品としての安定性や体内での溶けやすさがわかるため、新薬を市場に出すまでの開発期間短縮に貢献できるというもの。同コンソーシアムは、今年7月から「モレキュラー・クリスタログラフィー・コンソーシアム」(MCC)と名称を変えて第2期に進む予定であり、武田薬品工業も引き続き参加する可能性がある。
PDCは、1997年7月から3年間でスタートしたコンソーシアムで、今年の6月で第1期が終了する。武田薬品工業は3年目からのメンバーとして、実際には昨年12月に加入の契約を行った模様。このコンソーシアムにはこれまでに全部で20社が加入しており、そのなかにはアストラ・ゼネカ、BASF、バイエル、グラクソ・ウェルカム、コダック、ノバルティスなどが含まれている。日本企業のメンバーとしては初となる。
医薬品分子は、最終的には結晶化された化合物として製剤されるが、この結晶に多形性があり、生じる結晶形態によっては医薬品として安定でなかったり、吸収されにくいなどの場合もある。このため、新規な化合物に関して、それらの特性をシミュレーションで予測できれば、新薬開発の強力な武器になるわけだ。
とくに、すでにメンバーに提供されている「Powder Solve」プログラムは、粉末X線散乱スペクトルのデータをもとに、それに一致する結晶構造を自動的に発生させる機能を持つため、有用性が高く評価されている。化合物の大きな単結晶を実際に得ることは非常に難しく、これまでのところは微細な試料の粉末X線散乱スペクトルだけからでは、新規の結晶構造を確定する手段がなかったのだという。
PDCの開発責任者は、チバ・ガイギーで結晶多形予測と形態学のためのプログラムを開発したフランク・ロイセン博士が務めている。