米エンジニアスソフトウエア:デニス・ネギー社長インタビュー
システム統合と最適化で設計期間を大幅短縮、材料開発分野でも威力
2001.01.10−近年、コンピューターを利用した研究開発が一般的になるなかで、多くのソフトウエアを協調的に動作させたり、より最適な解を求めたりする技術に注目が集まっている。この分野をリードしているベンダーが「iSIGHT」(商品名)を持つ米エンジニアスソフトウエア社で、世界に120社のユーザーがあるが、そのうちの40数社が日本企業。日本市場の売り上げが全体の40%を占めている。化学・材料関連ではプラスチックの射出成形、化学プロセスの最適化、金属・合金設計などの用途で威力を発揮しているという。「ソフトウエアの統合と最適化で、うまく使えば20年の研究期間を1年にも短縮できる」と述べるデニス.A.ネギー社長兼CEOに新戦略を聞いた。
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エンジニアスは1994年に設立されたベンダーで、1980年代にゼネラル・エレクトリック(GE)でボーイング777旅客機用ジェットエンジン開発に利用されたシステムをベースにしている。ネギー社長は「1999年にベンチャーキャピタルから大きなファンドを得たことで飛躍の基礎が整った」と説明する。昨年に経営陣が一新され、ネギー社長自身も昨年5月末に新体制の一員として招かれた。
本拠地となるノースカロナイナ州内でも急成長中の企業で、成長率の高さでは州内で7位、全米でもトップ500社の178位に入っているという。
同社のなかでも目立つのは、日本市場に対する依存度が非常に高いという点だ。とくに、自動車、自動車部品、プラスチック、プラスチック加工など国内に企業数が多く、競争も激しいので、「iSIGHT」に対するニーズが高いと同社では分析している。さらに、日本法人のエンジニアス・ジャパンを構成しているスタッフがかつての日本クレイの出身者を中心としており、工学的問題に関する専門サポート知識に長けているという点も大きいようだ。
さて、同社のiSIGHTは設計過程で使用する各種アプリケーションの入出力ファイルをリンクさせて、複数のアプリケーションを簡単に統合させる機能を持つ。また、各シミュレーションで得られる解を最適化するための13種類の最適化手法を盛り込んでおり、全体としてエンジニアの設計環境を大幅に効率化することが可能。
「開発中のiSIGHT6.0では、設計に“シックスシグマ”と呼ばれる新しい概念を導入する」とネギー社長。これは統計分布の標準偏差であるシックスシグマ(6σ)を製品のロバスト性の性能指標として用いる考え方で、目標とするコスト、機能要件、生産要件、使用要件などを設計プロセスの上流段階で検討し達成することを可能にする。「この機能をDFSS(デザイン・フォア・シックスシグマ)と名付けた。シックスシグマを設計段階で適用するシステムは世界初であり、インパクトが大きいと思う」と述べる。
iSIGHTの適用分野は幅広いが、「新素材分野ではAIMプロジェクトが成功事例だ。DARPA(米国防総省高等研究計画局)から資金提供を受け、ブラッド&ホイットニー社と当社が中心になって進めたプロジェクトで、航空機エンジンのタービン用の新素材開発を行った。タービン部品は鍛造のやり方や条件によって特性が変化してしまう。以前は試作を繰り返して特性を評価していたわけだが、鍛造と熱処理の最適化、部品として望まれる機械特性の最適化を設計段階から考慮することにより、20年の開発期間を1年に短縮することも可能だと考えている」とネギー社長。
また、「AEAテクノロジーズが混合プロセスを最適化し、化学プラント内のミキサーのスループットを最大化させる技術開発を行ったほか、日本市場ではプラスチックの射出成形での応用例が多く、東レや積水化学工業などこの分野だけで4社の導入実績がある」とも。そのほか、大画面フラットブラウン管の電子ビームを最適化する電磁場制御の問題、大型冷蔵庫の冷気口の位置調整やタイミングを制御することで消費電力を最小化する問題などに適用された事例があるという。