コンフレックスが配座探索ソフトのパラレル版を製品化

パラレルCONFLEX、PCクラスター環境に対応

 2001.09.27−コンピューターケミストリーシステム(CCS)の専門ベンチャーであるコンフレックス(本社・横浜市中区、大田一男社長)は、豊橋技術科学大学の後藤仁志助教授らのグループが開発した配座探索プログラムの並列処理バージョン「パラレルCONFLEX」を製品化し、販売を開始した。対象とする化合物が取り得るすべての立体配座を自動的に発生させ、化学的に重要な配座異性体の最適化構造をもれなくみつけ出すことができる。大量の立体構造を計算によって評価するため、多大な時間を要するのが問題だったが、並列処理の導入でボトルネックを解消。マッキントッシュ、ウィンドウズ、Linuxに対応しており、同社ではさらに計算を加速する拡張ボードも合わせて提供していく。

 分子の立体構造を調べるためには、いったん結晶化させてX線回折法により解析することが多いが、もともと分子は“やわらかい”存在であり、例えば生体内のような溶媒中では結晶構造とは違う形を取っている可能性もある。 CONFLEXは配座発生と構造最適化の機能を合わせ持っており、たくさんの初期構造を発生させて自動的に変形を加えながらエネルギー計算を繰り返すことで、安定な配座異性体の最適化構造を探索する。

 今回のパラレル版は、個々の構造に対するエネルギー計算をクラスターのノード間で分散させることで全体のスループットを向上させる仕組み。後藤助教授らの研究室では16ノードの環境で開発・利用を進めてきており、現在は256ノードでの検証も行っているという。それぞれの計算は収束までに時間差があるため、自動的に空いているノードを探して計算を割り振るダイナミックな処理を可能にした。このため、ノード数の増加に応じてパフォーマンスがほぼ直線的に向上するのが特徴となっている。

 現在、マッキントッシュとLinuxのクラスター環境、ウィンドウズではSMP(対象型マルチプロセッサー)環境をサポートしており、基本的にはメッセージパッシング型の並列処理を行う。

 また、同社では富士ゼロックスが開発した分子動力学法(MD)アクセラレーターボード「MDエンジンII」を販売しているが、これがCONFLEXにも効果があるため、組み合わせての提供にも力を入れていく。この製品はパソコンなどに内部装着できるボード製品で、PCIバス対応版が新発売されたことにともない、10月末までキャンペーン価格39万8,000円(通常価格78万円)で提供されているもの。1枚のボードに4個の専用プロセッサーが搭載されている。

 CONFLEXでは、構造を変形させる際に原子間の伸縮やねじれなどの非結合相互作用を計算するが、これがMD法の分子間相互作用計算と同種の計算であるため、MDエンジンIIのアクセラレーション機能を活用することが可能になる。後藤助教授によると、最大で2倍程度の高速化が期待でき、とくに大きな分子の配座探索でメリットが大きいという。

 さらに、同社ではパラレルCONFLEXの専用GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を開発中であり、来年の初めにはサンプル提供が可能になる予定だ。

 なお、後藤助教授らのグループは、たん白質の配座探索の研究にも取り組んでいる。たん白質のような巨大分子になると、少なくとも数千から万単位の配座を考慮する必要がある。 CONFLEXで扱う配座の可能性は実際には無限大になってしまうが、CONFLEXはエネルギーの低い方から順番に構造を出せるので、生物化学的に意味のある配座を提案できるのではないかとしている。このような巨大な計算には、クラスターシステムによる並列処理を適用することが重要になるだろう。