CTCLSがコンビナトリアル材料科学の研究システムを発売
米シミックスと提携、不均一計触媒・ポリマー重合触媒開発用など
2001.07.05−伊藤忠テクノサイエンス(CTC)グループのCTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、コンビナトリアル材料科学の大手技術会社である米シミックステクノロジーズ(本社・カリフォルニア州、スティーブン・ゴールドビー社長)と国内における代理店契約を締結、シミックスが開発した材料開発のためのハイスループットスクリーニングシステム「ディスカバリーツールズ」の販売を開始した。新規な不均一系触媒とポリマー重合触媒を短期間で開発するための実験装置とソフトウエアツールがパッケージ化されたシステムで、自動化された環境で年間5万−6万件の実験を行うことができるなど、研究の探索範囲を従来の何100倍にも広げることが可能。世界初の商用システムであり、国内での反響も注目される。
シミックスは1994年に設立され、1996年から実際に活動をはじめた企業で、コンビナトリアル材料科学の受託研究ビジネスを主体にしている。現在、17社の顧客があり、アプリケーションは触媒、DNA分離膜、X線蛍光体、熱伝導材料、燃料電池、電極材料など幅広い。
今回、CTCLSが販売する「ディスカバリーツールズ」はシミックスがそれらのプロジェクトで実際に使用してきた研究環境を外販しようというもので、いまのところ「HetCatシステム」「ポリオレフィンシステム」「ポリマー特性システム」の3種類が製品化されている。来年には、医薬品製剤設計のプレフォーミュレーション分野で利用できる結晶多形関連のシステムが追加される。
「HetCatシステム」は不均一系触媒を対象にしたもので、触媒の配合などを調整してサンプルのライブラリーを作成し、それを実際に分注して、一次スクリーニング、二次スクリーニングを行い、候補物質を絞り込むまでの研究プロセスを自動化するためのソフトウエアと実験装置で構成されている。一次スクリーニングでは同時に256個のサンプル(数100から数10マイクログラムの微量サンプルを使用)の触媒活性を評価でき、二次スクリーニングでも同時に48サンプルの評価が可能。このシステムで年間6万件のスループットが得られるという。
「ポリオレフィンシステム」は、オレフィン系ポリマー用の重合触媒を対象にしており、最大96個の反応器を並べて実際にそれぞれの触媒候補物質でポリマーを重合(生成量は約7ミリグラム)させ、できたポリマーの分子量や融点、ガラス転移温度などの特性を評価することで触媒のスクリーニングを行う。年間4万8,000件の重合実験、同7万5,000件の解析を行う能力がある。
3つ目の「ポリマー特性システム」は、ポリマー自体の特性評価を微量サンプルにてハイスループットで行うシステムで、現在はねじれと弾性率、ゆらぎを計測することができるという。
これらのシステムはすべてシミックス社が独自にデザインして開発したもので、消耗品も含めてシミックスから購入しなければならない。システムの価格は一式で2億5,000万円から。標準的な構成をフルシステムで組むと、HetCatで7億円、ポリオレフィンシステムで10億円ほどになるということだ。CTCLSでは、今後3年間に触媒などの化学向けで10セット、来年の結晶多形システムなどの医薬向けで10セットの販売目標を立てている。
なお、シミックスのウェブサイトの情報によると、すでにダウケミカル、エクソンモービル、IMP(メキシコの石油研究機関)、アベンティス、ギルサ(米のポリマー技術会社)、住友化学工業がすでにディスカバリーツールズを発注している模様。
コンビナトリアル材料科学のノウハウを持つ企業は、シミックスのほかにドイツのhte、オランダのアバンティウムがある。あとの2社はやはり受託研究がメインで、システム商品を外販するのは今回のシミックスが初めてである。