富士通がMD系材料設計支援システムの最新版
機能強化したWinMASPHYC2.0を発売、高速化・操作性など向上
2001.07.19−富士通は、分子動力学法(MD)をベースにした材料設計支援システムの最新版「WinMASPHYC2.0」を8月から発売する。モデリングの際の操作性を改善したほか、計算機能の大幅な向上を図り、温度や圧力を変化させながらのシミュレーションや結晶成長・表面吸着などのシミュレーションも可能になった。また、計算の進行状況をリアルタイムに可視化できるようになり、計算を途中でやり直したり、計算条件を変化させたりすることも容易になった。ウィンドウズ対応で、機能限定版のスタンダード(10万円、教育機関向けは半額)、標準パッケージのプロ(60万円、同)、特殊な解析機能を付加したウルトラ(180万円、同)がある。
WinMASPHYCは、富士通が完全オリジナル開発した多粒子系のMDシステムで、周期境界条件を利用して分子集合体のダイナミックな挙動を解析することができる。ポリマーや液晶などの有機物からセラミックス、金属、半導体などの無機材料までの幅広い物質を扱え、固体や液体、表面・界面などの分子のさまざまな状態をシミュレーションすることが可能。
最新版のWinMASPHYC2.0は、心臓部のMDエンジン部分をバージョンアップしており、大きな分子の計算を高速化する新しいアルゴリズムを採用した。計算できる原子数の制限もなくなり、大規模な系のシミュレーションが可能になった。入力条件の設定もウィザードによって行われるようになり、操作ミスが起きにくくなっている。
シミュレーションでは、設定温度や圧力を連続的に変化させながら計算を進めることもできるほか、計算過程がリアルタイムにグラフィック表示されることを利用して、例えば温度が高すぎて結晶が溶けてしまったなど、計算の失敗が途中でもわかるようになった。また、この機能を利用して計算過程のグラフィックを連続的に画像出力させることができるので、ムービーファイルなども簡単に作成できる。
その他、X線中性子線干渉関数、分子内座標解析、ボロノイ多面体解析などの解析機能の強化、無機結晶の作成を容易にするクリスタルビルダーの追加、アミノ酸やたん白質などの生体系分子への対応なども図られている。
一方、WinMASPHYCウルトラは、主に3つの分野での特殊な機能を盛り込んだもの。1つは結晶成長や表面吸着、表面損傷などの現象に対する解析。半導体の結晶成長や基板上への分子吸着、高速粒子の衝突によるスパッタリングなどの表面損傷などをシミュレーションできる。この機能では、任意の原子または分子を発生させることができ、その発生源の高さや大きさ、速度などを設定することでさまざまな現象を再現可能。
2つ目は計算対象の一部を固定したり強制的に移動させたりする機能。分子レベルで材料の引っ張りシミュレーションを行うことができ、何ステップ当たり何オングストローム動かすかなどの精密な設定が可能。しかも、周期境界条件を使わないで引っ張りができるようになった点が特徴だという。
3つ目は静電場印加機能。分子集合体に対して電場をかけることができ、液晶のスイッチングや電池内の電解質のシミュレーションなどに役立つ。
なお、WinMASPHYCは海外では「マテリアルエクスプローラー」の商品名で販売されており、今回のバージョン2.0海外版は今秋に発売予定となっている。
同社では、最新版の発売に合わせ、7月末まで現行バージョンの60%引きキャンペーンを行っている。企業向けであれば、24万円で購入でき、それを2.0にアップグレードすると、定価60万円よりも安い54万円で入手できる。また、販売代理店の富士通九州システムエンジニアリング(FQS)では2.0の購入者にWinMASPHYCの操作を実践的に学べる教育ソフト「コンサルティングパック」を無償バンドルする特別キャンペーンを年末まで実施する。