ウィンテル陣営がエンタープライズ市場攻略に本腰

IAサーバーがサンの1.5倍の性能を発揮、ECA協議会のベンチマーク公表

 2001.07.04−ウィンテル陣営がパーソナル市場からビジネス/エンタープライズ市場へと本格的に動き出した。マイクロソフトとインテルは6月末に共同で「eサミット」と称するイベントを開催したが、その中で両社はインテルの新64ビットプロセッサー「アイテニアム」と、開発コード名ウィッスラーと呼ばれていた専用OS「Windows .NET Server 64bit(ウィンドウズ・ドットネットサーバー64ビット)」の最強タッグにより、eビジネスの基幹業務システムのプラットホーム市場を席巻する野望を示した。小規模のウェブサーバーではウィンテルの組み合わせが強いが、基幹系ではサン・マイクロシステムズのUNIXサーバーのシェアが高い。今回、両社はサンの最上位機の1.5倍の性能を示したベンチマークを引き合いに出し、シェア奪取への自信をみせている。

  ◇  ◇  ◇

 イベントのなかで、米インテルのデボラ・コンラッド副社長(セールス&マーケティング事業本部)は、「日本のECA協議会が実施したベンチマークによると、ジーオンプロセッサー搭載のPCサーバーがサンの最上位UNIXサーバーであるスターファイアーの1.5倍の性能を示した。インテルの新コンセプト“マクロプロセッシング”により、eビジネスの基幹業務に耐える性能を持つことが明確になった」と強調。マイクロソフトの瀬戸口静美執行役員エンタープライズソリューション本部長も「インテルのアイテニアムとウィンドウズ・ドットネットサーバー64ビットの早期導入プログラムをスタートした」とエールを送った。

 コンラッド副社長が引き合いに出したのは、今年の1−4月にかけてECA協議会が実施したベンチマーク。この団体は、IA(インテルアーキテクチャー)サーバーによる基幹業務システムを推進するユーザー組織で、ベンチマークを実施するのはこれが3回目になる。過去2回のベンチマークは8ウェイのIAサーバーとSQLサーバーとの組み合わせで行っている。

 今回のベンチマークは、IAサーバーとUNIXサーバーのそれぞれの最大規模のマシンを用いて、実際の業務システムの観点から性能比較を行ったもの。IAサーバーは日本ユニシスのES7000、UNIXサーバーはサンのスターファイアーE10000を用い、データベース環境はOracle8iを採用。これにオンライン証券取引をシミュレートした独自のベンチマークプログラムを流した。ベンチマークは証券の発注から売買処理、清算処理まで5つのサブシステムで構成されており、プロセス間通信にはXMLを利用した。

 グラフは、ベンチマークにおいてES7000がスターファイアーの何%の性能を発揮したかを示したもので、買い注文を中心にしたオーダー処理と発注状況確認を中心にしたチェック処理の合計で性能を計った。1回のテストに当たり、オーダー処理とチェック処理の比率を3段階に変えて測定したが、オーダー処理の比率が高いほどシステムにかかる付加が大きくなる。2対8の比率が実際の業務に最も近いという。

 第1テストは、ジーオン(550MHz)を24個搭載したES7000とUltraSPARC II(400MHz)を24個搭載したスターファイアーを用いたが、この条件ではスターファイアーの性能が大きく上回った。

 第2テストは、ES7000プロセッサーをジーオン(700MHz)にアップグレードし、16ウェイでの比較となった。この条件では、ES7000はスターファイアーをわずかに上回る性能を示した。

 第1と第2のテストに関しては、ES7000上でXMLパーサーを稼働させるJavaバーチャルマシン(VM)がOracle8iのデフォルトのもの(Sun1.2.1)だったが、それをIBM製のVM(JVM1.3.0)に変えた結果が第3テストということになる。この条件ではES7000の性能が大幅に伸び、スターファイアーを1.5倍以上上回る結果となった。

 今回のベンチマークプログラムは、もともとマイクロソフトのSQLサーバー上で開発されたものであり、オラクルに最適化されていないという問題もあったが、ECA協議会では少なくともIAサーバーがUNIXサーバーに比較して十分にミッションクリティカルな業務に耐えられる性能を示したと位置付けている。

 講演のなかでコンラッド副社長は、複数のマイクロプロセッサーを利用することで、経済性と高性能を両立する“マクロプロセッシング”と称する新コンセプトを披露。「1日に150万ユーザーが訪れるMSNBCポータルサイト、世界第4位の大規模サイトでオンライン書店のbn.com、毎日200万件のトランザクションを99.97%の信頼性で処理するNASDAQ、1日に1億ドル以上の取り引きがある世界最大のB2Bエクスチェンジであるフリーマーケッツ、1日に3億ドル以上を売り上げるデルコンピュータ、アクセス数世界第2位のポータルを持つマイクロソフト、毎日3億ページビューのライコス、世界トップのサーチエンジンGoogleなど、インテルとマイクロソフトによるeビジネスソリューションはすでに大きな実績をあげている」と強調した。

 また、マイクロソフトの瀬戸口本部長は、ウィンドウズ・ドットネットサーバー64ビットとアイテニアムの早期導入プログラムに安田火災海上保険とジェイティービー、ブリヂストンなどのユーザーが参加していることを明らかにした。さらに、ハードウエアパートナーとしてコンパック、東芝、NEC、IBM、HP、日本ユニシス、日立製作所、富士通、三菱電機が、SIパートナーとしてNTTデータ、NTTデータ先端技術、野村総合研究所を加えた布陣で、ウィンテルの勢力圏をエンタープライズ市場に拡大させていく計画を示した。