日立ソフトがライフサイエンス研究センターを開設
バイオインフォ/DNAチップ事業の総合拠点
2002.01.18−日立ソフトウェアエンジニアリングは17日、バイオインフォマティクスとDNAチップ/マイクロアレイを中心としたライフサイエンス事業の専門拠点として、横浜市鶴見区に「ライフサイエンス研究センター」を開設したと発表した。パートナー企業のDNAチップ研究所を含め関連事業部門のスタッフを集結させた。国内の製薬会社、病院、研究機関に対してシステムソリューションを提供するほか、次世代チップ開発などにも取り組んでいく。
開設した拠点は、地上4階建て、のべ床面積が5,800平方メートルで、投資額は土地5億円、建物14億円、設備1億円の総計20億円。事業部門の総員100名のうち、顧客や提携先に常駐している者を除いて約60名が集まっている。そのうち30名がウェット系の技術者だという。DNAチップ研究所は、日立ソフトが53.6%を出資しているビジネスパートナーで、横浜・千葉・奈良に分散していた29名(ウェット系は19名)のスタッフ全員がこのセンターに入居した。
日立ソフトのライフサイエンス事業は、情報システムをベースにしたバイオインフォマティクス事業と、DNAチップ研究所などとの共同によるDNAチップ/マイクロアレイ事業の大きく2つに分かれる。事業規模は2001年3月期は30億円、2002年3月期は50億円を見込んでおり、2005年3月期には80億円まで成長させる計画。このうち、DNAチップ/マイクロアレイ関連は2001年3月期で4億円を占めている。2005年3月期には、売り上げの30%がDNAチップ/マイクロアレイ関連になるとみている。
今回、ウェットとソフト、ハードの部隊が集約されたことにより、3分野のノウハウ共有による製品開発力の強化が達成されるという。また、トータルソリューションの提案・構築能力をさらに高度化させることも狙いとなっている。
とくに、DNAチップ/マイクロアレイの製造に関しては、DNAの増幅からスポッティング、検査、出荷梱包までの全工程をクリーンルーム内で作業できるようにしたことで品質の向上を実現。5台のスポッターを恒温恒湿室で運用しており、月産2,000枚の生産が可能になった。スペースには十分な余裕があり、随時生産能力の拡大が可能である。
DNAチップ研究所では、P1・P2レベルの研究室など、センター内に3億円をかけた最新設備をそろえ、大規模なDNAライブラリーを構築していく。臓器などからのDNA精製抽出によるライブラリー収集から、DNAクローンのファージ増殖によるライブラリーの維持、冷凍冷蔵室によるライブラリーの保管まで、センター内で一括して行える環境を実現した。
現在、イースト菌やヒト白血球などの汎用DNAチップを製作しており、コムギ発芽、マウス脳、ラット腎臓、イネなどにそのラインアップを広げるほか、新しくオリゴ方式のチップ開発にも着手する。これまでのチップは研究用途だったが、オリゴ方式チップは臨床医療分野向けとなる。
これは、実際の生物から抽出した遺伝子ではなく、解明されたゲノム配列をもとに化学合成で組み上げた遺伝子を基板上にスポッティングしたもの。化学合成なので特性が安定しており、解析結果の信頼性も高いという特徴がある。日立ソフトとDNAチップ研究所は、このチップを予防医学や疾患診断の目的ではなく、適切な治療薬の選択のための遺伝子検査向けにデザインして提供する考え。今後2−3年で大きな市場に成長する可能性があるという。
一方、日立ソフトは今回の拠点を生かして、遺伝子解析のためのデータサービス事業への進出準備も進めている。これまでに蓄積した高付加価値の遺伝子情報や生命情報を、医療・薬品・食品などの産業分野で応用できるようにしていく。このための専用機として、すでにIBMのUNIXサーバーを導入しており、できるだけ早く事業体制を整えていく考えだ。