科学技術振興事業団が高分子DBサービスを拡張
クラレがNMRスペクトルデータを提供、信頼性高い情報を収録
2002.03.20−科学技術振興事業団(JST)は、高分子データベース(DB)の無料オンラインサービス「PoLyInfo」(http://triton.tokyo.jst.go.jp)に、世界でもあまり例がない高分子のNMR(核磁気共鳴)データを追加し、新たなサービスを開始した。今回のNMRスペクトルDBは、クラレが長年社内で蓄積してきたデータを提供したもので、測定条件などもしっかりとしており非常に信頼性が高いという。 PoLyInfoには現在2,200名の登録ユーザーがいるが、今回の新サービスによりさらなる利用者増が期待されている。
今回、クラレから利用許諾を得て提供するNMRデータは、ホモポリマー70種とコポリマー84種を含む約180件の情報が収録されている。それぞれ、NMR装置から直接出力されたデータと帰属情報が記録されており、利用者はPoLyInfoと共通の検索システムを用いてポリマー名称や分子量、ポリマーに含まれる部分構造などを指定して検索をかけることができる。
検索結果として表示されるNMRスペクトル図は単なる画像ではなく、Javaアプレットによって出力データから描画されているため、画面上で自由に拡大や縮小が行える。スペクトルの小さなピークも精密に読み取ることが可能だ。
また、部分構造検索には独自のテンプレートが用意されており、目的の構造をその中から選んで条件指定を行うだけで簡単に情報をみつけ出すことができる。
同時にNMR以外のデータも大幅に強化された。 PoLyInfoのサービスは、約5,000種類のポリマーと候補モノマー、約1万8,000の物性ポイントを収録して昨年の4月にスタートしたが、現在は同じく約7,000種、約4万物性ポイントにデータ量が拡張されている。
利用するのは無料だが、ユーザー登録を行う必要がある。現在の登録者は2,200名で、そのうち400名が外国からの登録だという。
一方、JSTではPoLyInfoの兄弟関係に当たるDBサービスとして合金や無機化合物を対象にした「ポーリングファイル」(http://atlas.tokyo.jst.go.jp)も提供しており、こちらもこのほどDBを大幅に更新した。第一原理計算を用いて体系的に計算した電子構造データを蓄積した「計算物性DB」、エンジニアリングデータを収録した「拡散DB」、「金属材料強度DB」、「圧力容器DB」などが新たに公開されている。これらもやはりユーザー登録を経て無料で使用できる。現時点で、基本となるポーリングファイルで約500名の登録者がいるという。