SunTechDays基調講演:SunONE対ドットネット
ウェブサービスの主導権争いが激化、Javaの優位性を主張
2002.03.15−ウェブサービスの主導権を巡って、サン・マイクロシステムズのSunONEとマイクロソフトのドットネット(Microsoft .NET)という二つのフレームワークが激しく争っている。去る3月13日から15日までパシフィコ横浜で開催されたデベロッパーズコンファレンス「SunTechDays」の基調講演でiPlanet部門のスチュアート.C.ウェルズ上級副社長と技術エバンジュリストのレジナルド・ハッチャーソン氏がドットネットとの比較に言及してSunONEの優位性を訴えた。
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講演のなかでウェルズ副社長は、ウェブサービスは25年来のオブジェクト指向の約束を具現化するものだと位置づけ、その意味でJavaが大きな一歩を記したのであれば、次のさらに重要な一歩をウェブサービスが担うことになると述べた。
SunONEのフレームワークにおけるウェブサービス対応は着々と進んでおり、今年の後半にはウェブサービスの4大標準技術であるUDDI(ユニバーサル・ディスクリプション・ディスカバリー&インテグレーション)、SOAP(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)、WSDL(ウェブサービス・ディスクリプション・ランゲージ)、XML(エクステンシブル・マークアップ・ランゲージ)のサポートがほぼ整う予定となっている。加えて、実際のマーケットにおける普及状況は3段階に分けて進むという見解を示した。
ウェルズ副社長は、「フェーズ1は、ウェブサービスをJavaで作成し、iPlanetポータルサーバー上で動かすという図式になる。ここはまだテスト段階だ。フェーズ2になるといよいよUDDIが出てくる。ただ、まだセキュリティの問題があるのですべてはファイアーウォールの内側だ。従業員や特定のパートナーなどのしっかりした信頼関係があるなかでの利用になるだろう。しかし、UDDIにより利用可能なウェブサービスが登録されるので本格的なアプリケーションの構築が可能だ。フェーズ3では、UDDIがファイアーウォールの外に出る。つまり、他社が開発したウェブサービスを共有財産として活用できるようになるわけで、B2BあるいはB2Cのウェブサービスが完全な形でスタートすることになる」と解説した。
ここで重要になるのが、ウェブサービスを利用する際の認証技術である“リバティ”だ。ドットネットとの最大の争点の一つであり、マイクロソフトは“パスポート”認証技術を推している。ウェルズ副社長は、「パスポートの場合は、世界中の個人情報がマイクロソフト一社によって格納されることになる。パスポートの利点は、マイクロソフトのパートナー間であれば、どこへでも自由に行き来できることだ。自動的にトレースされるので、10件のサイトで買い物をしても一括で支払うことができる。それに対して、リバティーでは個人情報がそれぞれのサービス事業者によって保有されるので、別のサイトやサービスに移った時に個人情報の使用を許すかどうかを、利用者本人と元の事業者の双方が合意によって確認しなければならない」という。実際の利用においてはリバティーの方がわずらわしさが残るが、利用者にとってはセキュリティ面で、事業者にとっては自分の顧客情報を守るという点で、リバティーに利があるというのがサンの判断である。
一方、ハッチャーソン氏は、ウェブサービスは国境を超えて利用できるほどのビジネスチャンスの拡大をもたらすだけに、標準に準拠していることが重要だと指摘し、具体的にSunONEとドットネットとの比較検討を行った(別表参照)。
「SunONEの基盤であるJ2EE(Java2 エンタープライズエディション)は50以上のベンダーがつくり上げている技術であり、すでに数百社、数千社のベンダーがサポートしているオープン標準である。それに対してドットネットは“製品”だ。買う必要がある」とハッチャーソン氏。ウェルズ副社長も「SunONEにはすでに実績があり、何百万ものユーザーを現にサポートしている。またマルチプラットホーム対応でSOLARIS、Linux、Windows、HP-UX、AIXでも動く」とフォロー。
ハッチャーソン氏は、「フレームワークとしてはドットネットもよくできている。ここは互角だろう。ただ、パフォーマンスはベンダーの選択肢の多いJ2EEが優れている。また、マーケティングはマイクロソフトの方がうまいが、ドットネットで使用するC#言語は新しくてまだ問題がある。Javaの方が上だ」と論じた。
最後に、基調講演に集まった聴衆に「SunONEとドットネットのどちらで開発をするか」と問いかけたハッチャーソン氏は、ドットネットを選ぶという手が一本も上がらなかったのを見て、「わお! ひとりもいないのか! これはすばらしいことだ」と上機嫌で講演を終えた。