プラットフォームコンピューティングがグリッドコンピューティング統合ツールを発売

Globus商用サポートを提供、必要な機能をフルスイートで製品化

 2002.04.25−カナダの分散コンピューティングソフト大手ベンダーの日本法人、プラットフォームコンピューティング(本社・東京都新宿区、今井龍二代表取締役)は、グリッドコンピューティングを構築・運用するための統合ツールセット「プラットフォーム・グリッドスイート」(商品名)を国内で販売開始した。複数のコンピューター間で柔軟なリソース共有を可能にする同社独自のミドルウエア「LSF」を下敷きにしたもの。オープンソースのツールキットである「Globus」に関する商用サポートも提供していく。当面は、官公庁の研究機関を主な販売対象としつつ、内外のコンピューターメーカーとの協業関係の確立に力を入れる。

 グリッドコンピューティングは、地理的に離れている多数のコンピューターをネットワークを使って網の目のように結び、仮想的な大規模コンピューターを現出させる技術。利用者は、電気や水道を利用するように(Gridには電力・水道・ガスなどのライフラインの供給網という意味がある)、そこから必要な時に必要なだけの計算パワーや記憶容量を取り出して使うことができる。本来はこのようなビジョンを実現することをグリッドコンピューティングと呼ぶが、最近では仮想計算環境の巨大パワーが注目され、大規模な科学技術計算を超高速で実行する技術としての側面がクローズアップされてきている。

 今回、プラットフォームコンピューティングが製品化した「グリッドスイート」は、グリッドコンピューティングを実現するためのツールを集めて統合したもので、複数のクラスター間を相互接続し、柔軟なリソース共有を可能にする「プラットフォームLSFマルチクラスター」、分散したグリッド環境で信頼性の高いファイル転送を実現する「プラットフォームFTA」、グリッド環境で分散したデータへの正確なアクセスを可能とする「AVAKI 2.0」、さらに米アルゴンヌ研究所と南カリフォルニア大学を中心としたGlobusプロジェクトで開発されたオープンソースのツールキットをベースにした「プラットフォームGlobus」から構成される。出荷開始は7月から。

 ただし、グリッドに参加するコンピューター上で「LSF」が動作している必要がある。これはネットワーク上に分散するコンピューターリソースを単一の仮想システムとして管理し、そこで稼働するアプリケーションの負荷バランスを最適化するミドルウエア。同社では、企業内またはインターネット上のパソコンの使われていない処理能力を収集してLSFクラスターのリソースに組み込む「プラットフォームLSFアクティブクラスター」も合わせて提供する。また、利用者がグリッドにアクセスする入口となる「グリッドポータル」も用意した。

 これらのコンポーネントを必要に応じて組み合わせることにより、グリッドコンピューティング環境を実現できることになる。とくに、Globusはディレクトリーやセキュリティ、データ共有などの基本的な土台を構成するツールキット。ディレクトリーサービスによってグリッド上でのリソースを特定し、それらの管理・選択・確保を容易としたり、リソースの構成や機能、ステータスへの統一されたクエリー方法を提供したりする機能がある。もとがオープンソースであるため価格はなく、1クラスター当たり商用サポート費用が年間200万円からとなっている。

 同社のソニアン・ゾウ本社CTO(最高技術責任者)は「Globusはグリッドを構築するためには必要なツールだが、グリッドを利用したいだけなら当社のフルサポートおよびサービスを導入してもらえればいい。セキュリティやディレクトリーサービスが必要ないなら、Globusを入れなくてもかまわない」と述べている。

 同社のLSFは、コンパックのスーパーコンピューターであるアルファサーバーSCシリーズに標準でバンドルされており、SCシリーズのユーザーであればそのままグリッドを利用することが可能。同社では、グリッドスイートを研究機関などに売り込む一方で、コンピューターベンダーに対してLSFのバンドルを行うよう働きかけて、将来の企業ユースの拡大への足がかりを築いていく考え。ゾウCTOは「グリッドはあらゆるコンピューターがつながるのが前提なので、幅広い協業関係をつくり上げていきたい」とした。