サイエンス・テクノロジー・システムズ:福島信弘社長インタビュー
川上から川下までのバイオインフォトータルサービス、自社製品開発にも意欲
2002.07.18−バイオインフォマティクス分野に特異なノウハウを持つ新ベンダー、サイエンス・テクノロジー・システムズ(STS)が本格的に事業を開始した。伊藤忠商事、CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)、コンパックコンピュータ、東京リース、日本オラクルの5社に第三者割り当て増資を行い、事業体制を整えた。バイオ研究向けシステムを設計・構築するためのコンサルティングを中心にしつつ、実際のインテグレーションから稼働後の運用・技術サポートまでトータルなサービスを提供する。「来年にはさらに資本金を2倍に増資し、2006年には株式公開を果たしたい」と述べる福島信弘社長に戦略を聞いた。
◇ ◇ ◇
同社の設立は今年の2月。6月に第1期の決算を終えており、「売り上げは7億円で、いちおう黒字が出た」(福島社長)という。第三者割り当て増資の結果、現在の資本金は9,150万円。出資比率は伊藤忠商事が7.65%、CTCLSが10.93%、コンパックコンピュータが10.93%、東京リースが5.46%、日本オラクルが2.95%。5社合計で37.92%となり、残りは福島社長以下の9名のスタートメンバーである個人株主が所有している。このため、経営の独自性は保たれている。
福島社長は、日本クレイとそれを買収した日本SGIにおいて、化学・バイオ分野を対象にしたハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)をサポートしてきたエンジニアで、京都大学などのわが国最先端のシステムを手がけてきた経験を持っている。今回の会社設立に当たっても多くのメンバーがSGIから移籍してきており、現在の社員数は25名に達している。
具体的なビジネス面では、当面は出資5社とのパートナーシップが中心になる。「STSがバイオインフォマティクス案件の設計やコンサルティングを担当し、CTCLSの豊富なアプリケーションを組み合わせてソリューションを実現するのが典型的なケースになるだろう。ハードウエアを中心にしたインテグレーションは東京リースが得意としており、コンパックやサン、IBM、SGIなど全方位的に対応できる。また、データベース(DB)はオラクルを全面的に採用していくことになっている」と福島社長。「伊藤忠グループが4月に大阪に設立したバイオインフォマティクスセンターの事業にも深くかかわっているほか、伊藤忠商事が近く設立する豪プロテオームシステムズの日本法人と提携し、たん白質解析システムの販売を手がける予定である」と説明する。
さらに、「当面はこのプロテオームシステムズやオラクル、プラットフォームコンピューティングのミドルウエア製品LSF、ウィンドウの半導体メモリーディスク装置などの他社製品を販売して売り上げを稼ぐ必要があるが、自社製品の開発も積極的に推進したい」と福島社長。
まず、Oracle9i DBをフルチューンしたバイオDBエンジンを開発し、年内にはプロトタイプを完成させる予定。現在、バイオインフォマティクスの世界で使われている検索エンジンは、まだゲノムデータが少なかった時代に設計されたアカデミックコードをベースにしたものがほとんどであるため、オラクルの最新DB技術をフルに駆使した形で、大量データに適した高速な検索エンジンをつくり上げていく。米オラクルとも技術面で連携しながら完成を目指す。
また、バイオインフォマティクス分野のシステムはネットワークも含めてますます大規模化・複雑化する傾向にあるため、それらをまとめて包括的に管理できる統合運用管理システムも商品化する計画。「アプリケーションも含めて統合的に管理できるシステムとして開発している点がユニークだと思う。バイオインフォマティクスに特有のニーズを満たせるようにし、異機種混在のマルチプラットホームに対応させたい」と述べる。
一方、やや分野は違うが、科学コンテンツを教育用途などでストリーミング配信するビデオ・オン・デマンド(VOD)システムの開発も手がけている。
福島社長は、「いまはバイオとIT(情報技術)の両方が分かる人間が少ないので、当社が仲立ちになってトータルサービスを提供することで国内のバイオ関連技術・産業の発展に寄与したい。将来的には当社で受託研究を請け負えるところまで体制を充実させたい。この分野は技術の進歩が速いので、いまは仕事の半分は研究をしているようなもの」と笑う。同社の今後の事業展開が注目される。