トムソンサイエンティフィックが英カレントドラッグスを買収

コンテンツ拡充で医薬・バイオ向け事業戦略強化

 2002.09.28−カナダに本拠を置く情報サービス企業群であるトムソンコーポレーションは、開発途上の治験薬情報の大手プロバイダーである英カレントドラッグス(イアン・ター社長)を買収した。科学技術文献情報の米ISI、特許情報の英ダウエントなどから構成されるトムソンサイエンティフィック(略称=TS、マイケル.J.タンジーCEO)のグループ企業に組み込む。国内では以前からカレントドラッグスの総代理店を務めているテクノミック(本社・東京都中央区、大塚賢一郎社長)との関係を維持・強化するとともに、日本におけるTSグループ全体としての有機的な活動を目指していく。

 ISIやダウエントを中核とするTSは、全世界で1,500−1,600人の従業員を擁し、2001年の売り上げは6億9,700万ドル(前年比7%増)、トムソングループ全体の35%を占めているという。ここに、カレントドラッグスの約100名のスタッフが加わることになる。

 今回の買収についてTSのタンジーCEOは、「近年はTSグループとしてライフサイエンス分野の事業拡大に力を注いできており、われわれの既存のコンテンツを補完できるカレントドラッグスには3年ほど前から関心を持っていた。今年の4月から具体的な交渉に入った」と経緯を説明する。

 現在、製薬会社やバイオ企業に向けたデータベース(DB)サービスは、ダウエントの世界最大の商用特許DBである「ワールドパテントインデックス」と遺伝子関連特許に的を絞った「GENESEQ」、医薬候補物質の化合物DBや文献情報へのアクセスを可能にするISIの「ウェブオブサイエンス」などがあるが、これにカレントドラッグスの「IDdb」(Investigational Drugs database)が加わる。これは、世界中の治験薬に関する化合物情報、特許、文献、学会、ニュースを包括的に提供するもの。エンドユーザーがすぐに利用できるかたちに情報がまとめられており、技術調査やライセンシング、営業戦略上の観点から多く利用されているという。

 カレントドラッグスには、IDdbのほかに、特許を含む医薬関連の総合発明DB「DOLPHIN」、医薬業界向けのビジネスインテリジェンスツール「IDeals」などの製品もあるが、「トムソングループへの統合で資本関係が強化されたことを生かし、さらに魅力的なコンテンツ開発に拍車をかけていく」(ター社長)計画。例えば、同じ特許情報を扱っていてもカレントドラッグス製品は市場分析などに用いられ、ダウエント製品は特許部門での権利関係の業務に役立つというように、それぞれ補完し合う関係にあるという。当然、「互いの製品が連携し合うメリットも大きいため、コンテンツの統合や相互リンクなども進めていきたい」(ター社長)としている。

 日本市場では、IDdbの普及をさらに加速させたい考えで、このほどテクノミックが提供している治験薬情報「明日の新薬」を統合したサービスを新たに共同開発した。「明日の新薬」はテクノミックが独自に編集・制作しており、国内および海外で開発中の治験薬の薬剤データや開発状況、開発データ、市場データなどをまとめたもの。単独でインターネットサービスならびにCD-ROMまたは冊子体で提供されているが、今回からIDdbの中からも検索・購読ができるようになる。