米ウェイブファンクションが日本支店を開設

CRCとの提携解消、事業拡大へ販売チャネルの再編目指す

 2002.09.13−分子軌道法を中心としたコンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーの米ウェイブファンクション(本社・カリフォルニア州、ウォーレン.J.ヒーリー社長)は対日戦略を変更し、13年間にわたって国内で販売活動を手がけてきたCRCソリューションズとの契約を7月末で解消、8月から独自に日本支店(内田典孝支店長)を立ち上げた。分子設計支援システム「SPARTAN」(商品名)の企業向けおよび教育市場での拡販をさらに図り、現在全世界で10%を占めている日本市場の売り上げ比率を20%にまで高めていく。

 SPARTANは、非経験的分子軌道法のGAUSSIAN85(GAUSSIAN98に至る米ガウシアン社の製品とは別系統のプログラム)を発展させたシステムで、1989年3月にセンチュリリサーチセンター(CRCソリューションズの前身)が、カリフォルニア大学アーバイン校のヒーリー教授らが開発したGAUSSIAN85の販売権を初めて取得するかたちで国内に紹介された。その後、1990年7月からSPARTANの名称で販売が行われてきている。ヒーリー教授は1991年にウェイブファンクション社を設立した。

 日本支店の所在地は、東京都港区西新橋1-2-9、日比谷セントラルビル14階で、電話は03-5532-7335、FAXは03-5532-7373。専任スタッフ2名で業務を開始している。海外への直接進出は同社にとって今回が初めてで、日本市場に対する強力なコミットメントであると同時に、具体的な事業規模拡大への期待も大きい。SPARTANは、ノートパソコンにインストールしてどこへでも持ち歩けるほどのコンパクトなシステムで、計算化学の専門家以外にも使いやすいのが特徴。同社では、世界中の化学者がSPARTANのようなシステムを一人一台で使いこなす時代が遠からず訪れると考えており、それをにらんで自ら日本市場に本格的に着手しておきたいという含みもあるようだ。直販だけでなく、あらためて販売チャネルの開拓も進めていく。

 さて、最新版のSPARTAN'02は、遷移状態データベース(DB)が内蔵されており、計算の時間をかけることなく遷移状態の構造を得ることができるようになった。反応機構を指定すると、DB内を検索してくれるので、得られたデータを初期構造に利用してさらにシミュレーションを行い、遷移状態に関する考察を深めることもできる。来春発売予定の次期バージョンでは、解析事例DBを付加する計画もあり、あらかじめ1万化合物についてさまざまな解析条件で計算した4万件のデータを収録する予定だという。これらの機能強化を通じて、ユーザーの裾野を徐々に広げていく考えである。

 また、教育用途にもさらに力を入れ、10月には学生版のリリースも計画中。好評の教育者向けハンズオンワークショップ「SPARTANを用いた有機化学実験」も引き続き開催していく。現在、10月1日に東京・中央区立ハイテクセンターで、4日に大阪・大阪大学工業会館での開催が決定している。問い合わせはeメールで[email protected]まで。

 なお、日本支店では開設記念キャンペーンを実施中だ。ウィンドウズ版SPARTAN'02を企業向け45万5,000円(通常価格54万円)、大学向け17万円(同19万8,000円)などの割り引き価格で販売するほか、3年間有効の特別保守サービスを新たに提供する。企業向け17万円、大学向け4万5,000円で3年間のサポートとアップグレードが保証される。特別保守サービスの受け付けは今年の年末までとなっている。