富士通とFQSがチトクロームP450薬物代謝ソフトを開発

P450データベースを内蔵、未知の代謝物予測が可能

 2002.12.07−富士通は5日、薬物候補化合物の代謝を予測することで新薬開発を効率化する「BioFrontier/P450」(バイオフロンティア)を富士通九州システムエンジニアリング(FQS)と共同開発し、販売を開始したと発表した。生体内で薬物などを分解する代表的な代謝酵素群である“チトクロームP450”の代謝反応データベース(DB)をもとにして、未知の代謝物を予測する仕組みで、新薬候補化合物の絞り込みに役立つ。ソフト価格はサイトライセンスで300万円、専用DBの使用料は年間200万円。今後2年間で国内100セットの販売を見込んでいる。

 チトクロームP450は、数10種類の生体異物代謝酵素からなり、異物が長期間生体内にとどまらないように、異物を代謝することで水に溶けやすくし、体外へ排出されやすくする働きを担っている。医薬品の効き目の個人差や生体異物の発ガン性にチトクロームP450が関与していると考えられ、最近の新薬開発においてその存在が注目されているという。

 BioFrontier/P450は、構造式を入力することにより、代謝生成物と関与するチトクロームP450を予測し、根拠となる既知の代謝反応を表示する機能を持っている。ベースとなるチトクロームP450の薬物代謝反応データとその構造データは、クロアチア・ザグレブ大学のレンディク教授が収集したものをFQSがDB化した。FQSは、このデータの国内独占販売権を所有しており、今後も毎年300−400件の新規データを追加していく予定。

 このDBそのものを直接検索することも可能で、構造式や反応式をもとに、代謝反応やそれらの薬物、代謝生成物、代謝反応の誘導剤・阻害剤の分子構造式などを知ることができる。ユーザーが自分で実験したデータをDBに追加していくことも可能。MOLファイル、SDファイル、RXNファイル、RDファイルなどの代表的なファイル形式での入出力をサポートしている。

 具体的な用途としては、新薬候補化合物から毒性のある代謝物が生成される可能性の検討、化合物の体内での安定性の検討、生体内で代謝されることで薬の効果を発揮する新薬候補化合物のデザイン、代謝生成物の構造決定などがあげられるという。

 Windowsをベースにしたウェブ環境に対応しており、ブラウザーからの利用が可能。ウェブサーバーにアパッチ、Java実行環境としてJ2SE1.3が必要となっている。

 なお、BioFrontierという商品名では、2001年4月に呉羽化学工業から権利を取得したシステムがあるが、今回の製品はそれとは別のものとなる。これまでのBioFrontierは、一般的な代謝反応を網羅的に収録したDB製品で、柔軟な検索機能を特徴としており、代謝を予測する機能はない。それに対して、今回のBioFrontier/P450は、その名前の通りにP450に特化したDBを備えるとともに、代謝予測機能を盛り込んでいる。以前のBioFrontierも販売を継続するが、以前のものはWindows版、今回のものはウェブ版ということで動作環境も異なっており、両製品を統合して使うことはできないようだ。