富士通が2006年に大規模基幹系にLinux本格採用へ

まずミドルウエア7製品を投入、1,000名の開発陣と1万名のSE部隊そろえる

 2002.10.24−富士通は23日、Linuxを将来の基盤OS(基本ソフト)の1つと位置づけ、Linuxによる大規模基幹システムを2006年に実現させると発表した。従来からのUNIXやメインフレームで培ったミドルウエア技術とパッケージソフトをLinux上で本格展開するとともに、1,000名の製品開発陣と1万名規模の担当SE(システムエンジニア)部隊を来年度までにそろえていく。Linuxを大規模基幹系のアプリケーションに本格採用する計画を正面から示したのは同社が世界でも初になる。2006年時点で3,500億円の事業規模を想定している。

 Linuxがブームになって久しいが、世界的にみてもいまだに基幹系の業務システムへの採用事例はほとんどないのが現状。そうしたなかで、「少しおこがましいが、当社が本腰を入れるとアピールすることによって、Linuxへの流れを加速させたいとの思いがある」(杉田忠靖副社長)という。最終的には、Linux専用機で、基幹業務に耐える高信頼性のハードウエアを開発することも計画に含めているようだ。

 同社のロードマップによると、まず今年から来年にかけて基幹システム対象のミドルウエア製品をLinuxに移植し、来年以降に業務系アプリケーションを導入していく。具体的には大手ISPや通信キャリアなどをターゲットにし、VoIP交換機能を実現する「GeoServe SCS」、簡易メッセージングサービス「GeoServe IMS」などのパッケージを製品化するとともに、独自ERPパッケージの「GLOVIA」、eジャパン関連ソフトウエアなどのパッケージ製品群をそろえていく。2004年から2005年にかけてはミドルウエアのオープンソース活用を強化し、このころから基幹系業務へのLinux採用が部分的に始まるとみている。さらに、大規模基幹系への浸透は2006年以降になると判断している。

 同社では、そのゴールへ向けて段階的に手を打っていく考えで、今回まずはミドルウエア製品として、コラボラティブビジネスインテグレーションの「インターステージ」、統合運用管理ソフトウエアの「システムウォーカー」、データベース&ビジネスインテリジェンスの「シンフォウエア」、高信頼基盤ソフトウエア「プライムクラスター」、データ連携ソフトウエア「リンクエクスプレス」、キャリア/プロバイダー向け高可用ミドルウエア「GeoServe HA」、開発ツールの「NetCOBOL」−の7製品を今月から順次提供していく。

 また、Linuxディストリビューションとしてはレッドハットの「RedHat Linux アドバンスドサーバー」を全面的に採用。レッドハットと協力して大規模基幹系を対象にした拡張機能を開発し盛り込んでいく計画である。オープンソースコミュニティーへの貢献にも力を注いでいく考えだ。

 杉田副社長は、「決してLinux一色になるわけではない。WindowsとUNIXもさらに成長するし、メインフレームも存続していくだろう。ただ、Linuxがメインフレーム領域のアプリケーションまでをカバーできるようになることで、ユーザーの選択肢が大きく広がり、個々のユーザーの要求や事情にフィットした最適なソリューションを提案できるようになる点が大きい」とした。