ターボリナックスがWindows置き換えを狙う新デスクトップOS
10月に製品化、互換性・共存性を高め企業ユーザーへの浸透を図る
2003.08.21−Linuxの国内ディストリビューション大手であるターボリナックスは、10月に新しいデスクトップ向けLinux OS(基本ソフト)製品「Turbolinux Desktop」(ターボリナックスデスクトップ、開発コード名 Suzuka)を発売し、ウィンドウズの置き換えを本格的に進めていく。このため、ウィンドウズとの互換性や共存性を徹底的に追求しており、ネットワークを介して簡単にウィンドウズ機にアクセスしてワードやエクセルのファイルを編集したりすることが可能。見た目や操作法もウィンドウズそっくりに合わせており、ウィンドウズユーザーの違和感を取り除くように配慮した。とくに、企業ユーザーへの浸透を積極的に狙っていく。
Linuxはサーバー用のOSとしては広く普及しているものの、デスクトップ向けとしては普及に失敗してきたのが現状で、「Linuxはいわば工具であり、サーバー向けでプロが使うOSでいいのだという意見もある」(久保和広プロダクトマネジャー)という。しかし、「今回の製品はウィンドウズと同じ文房具として多くの人に利用してもらいたいという思いで開発した」(同)。
これまでは、どうしてもコマンドラインによる操作が必要になることが初心者には敷居が高かったが、ここへきてLinuxをGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)環境で利用するためのツール群が整ってきたことに加え、政府機関からの関心が高まっていること、ウィンドウズのセキュリティの弱さやアクティベーションによる個人情報の提出を嫌う企業ユーザーが増えてきていることなど、Linuxのデスクトップへの浸透を後押しする状況が生じつつあると判断し、製品化を決めた。
同社では、デスクトップ向け製品を「ターボリナックスワークステーション」の名称で販売してきたが、今回から商品名も一新し、マニアやホビー用途だけではなく、ビジネスで使えるクライアントOSとして本格的な普及を目指す。ベータ版を今月19日から公開(http://service.turbolinux.co.jp/tech/form/download_suzuka_publicbeta.php)し、最終調整を行って9月に正式な製品発表を行い、10月からリリースを開始する。
ターボリナックスデスクトップのデスクトップ画面の左肩には「マイコンピューター」や「マイドキュメント」、「ごみ箱」などの見慣れたアイコンが並び、下部にはKDEのタスクバーが常駐していて、一見するとウィンドウズとほとんど区別がつかない。KDEは通常はシングルクリック操作だが、デフォルトでダブルクリック操作に設定してあり、操作感もウィンドウズに合わせている。KDEのタスクバーにはウィンドウズによく似たスタートメニューがあり、ブラウザーやメール(モジラ)などのクイック起動アイコンが並んでいるほか、同様にアイコンから画面解像度の変更やバッテリー残量のチェックなども行えるようになっている。
企業内などにすでに導入されている既存のウィンドウズ環境にスムーズに合流することを目指しており、デスクトップ上の「Windowsネットワーク」専用アイコンからエクスプローラー風に簡単に他のウィンドウズ機の共有フォルダーなどにアクセスすることが可能。日本語のフォルダー名やファイル名にも完全対応しており、ウィンドウズのファイルを編集・保存することも自由に行える(ウィンドウズのファイルシステムがNTFSの場合は読み込みだけになる)。ワードやエクセルなどのオフィスファイルを扱うためにサン・マイクロシステムズの「スタースイート」を搭載している。また、ウィンドウズとのマルチブートをサポートするため、パーティション設定ツールをバンドルする方針である。
さらに、アプリケーションのインストール作業が大幅に簡略化されたことも特徴。“クイックイン”と呼ばれる独自の新技術で、ウェブページやファイルマネジャー上のパッケージをクリックすると自動的にウィザードが起動し、依存関係を解消してダウンロードからインストールまで一連の流れを一括して実行してくれる。インストールに使うRPMファイルはいままでと同じだが、RPM間の依存関係を抽出(RPMのヘッダー情報を参照しているという)したデータベースファイルが別に用意されており、それに従って関連するRPMを一気に導入する仕組みである。
同社によると、デスクトップ向けLinuxとして一足先に8月29日発売予定の「リンドウズ」と比べて、日本語を含むフォルダーやファイルを扱えることや、ソフトの起動が速いなどの特徴がある。ベータ版同士での比較では、OS起動で50秒、モジラブラウザーの起動で6秒の差があったという。価格はまだ未定だが、リンドウズが年間使用料金制に近いことに対して、ターボリナックスデスクトップは追加費用の生じないライセンスにするということだ。Linuxのカーネルも、リンドウズの2.4に対して、最新の2.6を採用する。細かな点だが、2.6ではカーネル自体でマウスを管理しているので、USBマウスを接続した時の安定性が優れているという。