産総研と三菱電機が組み込み用のマイクロサーバー技術を開発
世界最小CFカードサイズでLinuxが稼働、情報家電向けにオープンソース公開へ
2003.10.10−産業技術総合研究所のサイバーアシスト研究センター(CARC)と三菱電機の情報技術総合研究所は、Linuxが稼働する世界最小クラスのマイクロサーバーを開発した。コンパクトフラッシュ(CF)カードサイズの本体に、無線で自動的にインターネット接続ができるミドルウエアを組み込んだもので、情報家電などの組み込み用途に向けて技術開発をさらに進めていく。実際には23社が加盟している「サイバーアシストコンソーシアム」を通じて今回の成果をオープンにし、ユビキタス社会の実現を目的とした実証実験などにも取り組む。実用化時期としては、3−4年後を目指している。
今回試作したマイクロサーバーは、ハードウエアを三菱電機が、ミドルウエア開発をCARCソフトウエア研究チームが担当した。37×43ミリメートルの基板に、三菱電機が今春のISSCCで技術発表した低消費電力型のシングルチップマルチプロセッサー(32ビットRISCコアを2個内蔵)、および8メガバイトのフラッシュROMと32メガバイトのSDRAM、さらに外部インターフェースとしてCFスロットを搭載している。このプロセッサーは、ISSCC発表では動作周波数600MHzで最大消費電力800ミリワットと公称されているが、今回の試作マイクロサーバーでは周波数100MHz/500ミリワットにて動作しているようだ。
CARCが開発したミドルウエアは、ユビキタス時代にあらゆるデバイスにマイクロサーバーが組み込まれることを想定し、人手による設定や特別なサーバーの介在なしに自動的にネットワークを構成し、必要なサービスに自動的に接続できるようにしている。IPアドレスを得るための名前解決にはコンパクトな“マルチキャストDNS”プロトコルを用いているが、ネームサービスには通常のインターネット世界のアルファベットではなく、“テレビ”や“電灯”などの実世界の語彙を使用できるようになっている。
ミドルウエアに採用している技術は特別なものではないが、組み込みシステムクラスのコンパクトで制約の多い環境で実現できた点で、世界的にもユニークだとしている。研究グループでは、このミドルウエアをオープンソースとして公開するほか、将来的にはプロセッサーの設計情報も広く提供し、外部の機関や企業がハード/ソフトの両面で自由に利用・改造ができるようにしていく。
今回の共同研究は、2001年から活動しているサイバーアシストコンソーシアム(http://www.carc.aist.go.jp/consortium/)に三菱電機が参画する形で、昨年10月から実施されてきた。今回の記者会見の中では、マイクロサーバーを介してPDAからラジカセをコントロールするデモンストレーションが行われた。まず、PDAがマイクロサーバーにアタッチされた赤外線ポートにアクセスすると、サーバーはCGIスクリプトを動かしてPDAにクライアントをダウンロードさせる。これによって、PDAがラジカセのリモコンとしての機能を持つようになる。操作者がPDAからリクエストを送ると、マイクロサーバーは別のCGIスクリプトを動作させ、ラジカセに対して赤外線を発してリクエスト通りにCDなどを演奏させる−というもの。
プロジェクトの中では、音声入力によるコントロール方式も開発しており、将来的には、専用の小型リモコンデバイスを用意し、それ1台でさまざまな機器を制御できるようにする予定だという。
なお、今回のプロジェクトの詳細情報は、以下のURL(http://opl.carc.jp)から入手できる。