2004年春季CCS特集:ナノシミュレーション
MD計算の新領域にチャレンジ、液晶材料特性予測で成果
2004.06.30−ナノシミュレーションは、分子動力学法(MD)専門の国産ベンチャーで、自社開発のMDソフト「NanoBox」を中心に、MDシミュレーションの新領域に果敢にチャレンジしている。
同社は、液晶の材料設計に役立つシステムの確立を目指して開発を推進してきたが、これまでに予測に成功しているフランク弾性定数と回転粘度、相転移温度に加え、レズリ粘性の6つの要素をそれぞれ計算で評価することが可能になった。
これにより、液晶の基本的な物性をすべてシミュレーションできるめどがついたのだという。今後さらに、予測精度の向上を図り、液晶セルや配向膜、電極などをうまくモデル化して当てはめることにより、MDを利用した液晶材料設計を具体的に可能にするシステム開発を進めたい考えだ。
一方で、新しい応用分野への挑戦にも余念がない。例えば、自動車向けの燃料電池システムで、高圧水素ガスのパイプラインを構成するシーラントなどの高分子素材設計に役立てるためのMDシミュレーション技術を研究中。水素に高い圧力がかかっているため、実験でデータを得るために数億円規模の装置を使用しているのが現状であり、それをコンピューターシミュレーションで代替することを狙っている。
また、今年は米標準技術研究所(NIST)化学技術研究所(CSTR、http://www.cstl.nist.gov)が開催する「工業流体物性シミュレーションチャレンジ」(http://www.cstl.nist.gov/FluidSimulationChallenge/)に参加する予定。化学物質の溶解度や飽和蒸気圧、混合熱など、流体としての熱力学物性の予測手法を競うコンテストで、今回が第2回になる。チャンピオンの発表と表彰式は今年11月の米国化学工学会(AIChE)で行われる予定で、その結果が興味深い。