サイバネットシステムがCCS市場に新規参入
ライフサイエンスとナノテク分野が対象、アダムネットから事業継承
2004.09.25−サイバネットシステム(本社・東京都文京区、井上惠久社長)が、コンピューターケミストリーシステム(CCS)市場に新規参入した。専門の「新事業推進室」を設け、バイオ/ライフサイエンス分野とナノテクノロジー分野に焦点を当てて、研究開発を支援するパッケージソフトウエアを提供していく。とくにライフサイエンス分野では、三井物産系のシステムインテグレーターであるアダムネットから関連ソフトの営業権を移管されてCCS事業を継承したかたちとなっており、今後の展開が注目される。
サイバネットシステムは今月に東証一部に上場したばかり。機械設計や電気回路設計などを中心とするCAEシステムの大手ベンダーだが、将来の成長が期待される新分野としてCCS関連のソフトウエア市場への進出を決めた。
ライフサイエンス系でアダムネットから営業権譲渡を受けたのは、米デイライトおよび英BCI、米バイオバイトの製品群で、9月から既存ユーザーへのサポートも含めて完全にビジネスが移行している。アダムネットは前身の物産アドバンストシステムが1991年4月にトライポスの販売権を取得して以来、長年にわたってCCS事業を継続してきていたが、今回の営業権譲渡によりCCSからは完全撤退するかたちとなる。ただ、ここ数年はCCS事業が全社的な戦略からはやや外れた位置に置かれていたため、サイバネットシステムへの移管で各ソフトの売り上げが拡大することへの期待が大きい。今回は、担当者も含めてサイバネットシステムに移籍するかたちとなっている。
なかでも、デイライト社の化学データベースシステムが注目される。オラクルのデータカートリッジ技術に完全準拠しており、化学構造や反応式を組み込んだデータベースアプリケーションを業界標準のスタイルで容易に開発・運用することができる。構造式・反応式の記述に独特のSMILES/SMARTS表記法を使用しているため、データ検索速度が速いという特徴がある。
また、BCI製品はデイライトと連携できるクラスタリングツールで、ハイスループットスクリーニング(HTS)のデータ解析に威力を発揮する。バイオバイト製品には疎水性(logP)計算プログラムや構造活性相関(QSAR)解析ツールがそろっており、新薬の探索研究に役立つ。サイバネットシステムでは、アダムネットから移管された製品群を合わせて初年度4,000万円の販売を見込んでいる。
一方、ナノテク分野は同社が独自に販売権を取得した製品群となる。米ナノタイタンの「nanoXplorer」(ナノエクスプローラー)は分子レベルでナノデバイスのモデリングを行うことが可能。フラーレンやカーボンナノチューブ、DNA、デンドリマなどのテンプレートを使って簡単に回路を形成して、電気特性などを解析できる。XML技術を組み込んでいることが特徴だという。
もう一つはデンマークのアトミスティックス社が開発した「The Atomistix Virtual NanoLab」(バーチャルナノラボ)で、電子輸送理論をベースにしたシミュレーションプログラム。とくに、電極にはさまれた各種有機分子の接合界面の電子状態と電子輸送を第一原理的に計算することで、電極部分を含めた大規模な系の電流電圧特性を理論的に算出できる。モデル入力「Ibuild」から可視化「Iview」までのグラフィック環境が整っており、分子エレクトロニクス研究の強力な武器になる。コアとなる計算モジュール「Isolve」は「TranSIESTA-C」の名称で欧米の200を超える研究グループで利用実績がある。