新生アクセルリス:マーク・エムケア社長兼CEOインタビュー
開発部門の強化に全力、収益力回復にも自信
2004.08.03−コンピューターケミストリーシステム(CCS)最大手の米アクセルリスが新体制で再スタートした。今年4月に、創薬ベンチャーであるファーマコピアの子会社という位置づけから、ソフトウエア専業の独立会社に変わった。「3−5年の長期的視野で健全な成長を目指したい。先端のサイエンスを重視する当社の原点に立ち戻り、開発部門のクオリティ向上に全力を傾ける」と述べるマーク・エムケア社長兼CEOにこれからの戦略を聞いた。
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今回の再編は、まずファーマコピア傘下の創薬事業部門をファーマコピアドラッグディスカバリー(PDD)の名称で分離・独立させたあと、ソフトウエア事業部門だけが残ったファーマコピアの社名をアクセルリスに変更するという手順で行われた。これにともない、NASDAQのシンボルも“PCOP”から“ACCL”に変わった。
エムケア社長は「単独で自由に行動できるようになった点が最大のメリットだ」と話す。旧ファーマコピアから1億ドル近いキャッシュを引き継いだとみられ、「財務的な基盤が非常に強固になったので、今後はM&Aについてもアグレッシブに考えていきたい」という。
新体制になり、組織面で大きく変わっているのが開発部門。開発センターは米国サンディエゴと英国ケンブリッジ、インド・バンガロールの三極に存在するが、「以前はチームや組織体制がバラバラだった。今回、サンディエゴにライフサイエンスのモデリング製品の開発部隊を集中させ、ケンブリッジにはライフサイエンスのケムインフォマティクス分野とマテリアルサイエンス分野の開発者を集めた。バンガロールはこれからの戦略拠点で、バイオインフォマティクスとプラットホーム関連の開発を受け持たせている。バンガロールは昨年6月は10人だったが、現在では60人まで増員。年末には100人体制にする」とエムケア社長。この時点で社員数は550人の予定で、米国に200人、欧州に200人、アジアに150人という布陣になるという。全社員のうち、45%が開発部門のスタッフ。
とくに、エムケア社長が力を入れているのはソフトウエアづくりの品質やプロセスを改善することで、「例えば、昨年は品質管理の専門スタッフはわずか8人だった。これを年末までに40人以上に増やす。また、プロジェクトマネジャーが2人しかいなかったが、いまは9人になっている。開発の遅れをなくし、製品リリースのスケジュールを守ることも大切にしたい」。
一方で、売り上げの面でも健全な成長を目指す方針。独立前の昨年度は売り上げが前年マイナスだったが、「バイオインフォマティクスの不振が最大の原因だが、これは市場自体が悪かったためで、業界全体で60%の落ち込みがみられたともいわれている。またマテリアルサイエンス分野では、コンソーシアムがすべて終了する時期に当たったことが大きかった」と分析する。
今後については、「3−5年の視野で長期的に考えたい。キャッシュフローを改善すれば、利益はあとでついてくる」とエムケア社長。前職でも経営再建に成功した実績があり、「建て直しは得意だ」と笑う。日本市場については、7月からスタートした「ナノテクノロジーコンソーシアム」への参加を期待しているという。すでに、日本法人を通して提案活動に入っている。