アクセルリスがナノテク用CCS開発へコンソーシアム立ち上げ

センサー・半導体・表面などを対象、新計算手法を開発

 2004.07.15−アクセルリスは、ナノテクノロジー分野の研究開発を支援するための統合ソフトウエア技術の実用化を目指す「ナノテクノロジーコンソーシアム」を今月から立ち上げた。今後、日米欧の材料メーカー/デバイスメーカーなどの参加を本格的に募り、開発資金を集めるかたちでシステム構築を進める。参加メンバーはプロジェクトの方向性を決め、開発成果をいちはやく利用できるメリットがある。期間は3年間で、費用は約2,000万円。この分野のCCS技術はほとんど未踏領域であり、プロジェクトの行方が注目される。

 アクセルリスは、先端領域のCCS開発で長年コンソーシアム形式のプロジェクトを採用してきており、このスタイルでの実績は豊富。毎回、アドバイザリーボードとして世界中の学識経験者らを集めるが、今回のプロジェクトにも英国王立研究所のリチャード・キャットロー教授(http://www.ri.ac.uk/DFRL/people/c_r_a_catlow.htm)、独エルランゲン大学のティム・クラーク教授(http://www.ccc.uni-erlangen.de/clark/)、英国ケンブリッジ大学のジェームス・エリオット博士(http://www.cus.cam.ac.uk/~jae1001/welcome.html)、英国ケンブリッジ大学のマイク・ペイン教授(http://www.tcm.phy.cam.ac.uk/~mcp1/)、英国ケンブリッジ大学のアラン・ウィンドル教授(http://www.msm.cam.ac.uk/polymer/polymer_research.html)、東北大学の川添良幸教授(http://www.kawazoe.imr.tohoku.ac.jp/)らが名前を連ねている。

 今回のプロジェクトでは、とくにセンサーや半導体デバイス、高機能材料および表面技術を対象にしている。用途としては、トランジスター、ダイオード、ディスプレー、メモリー、ソーラーセル、LED、光学・機械・磁気・電子・化学・生物センサー、電池材料、記憶材料、複合材料、コーティング、生体材料、環境保護材料、固体接着剤、医療インプラント、カテーテル、遺伝子チップアレイ、電極材料−などが考えられるという。

 システムへの要求という観点からみると、ナノテク分野の設計ツールを実用化するために、扱える系の大きさと時間のサイズを大幅に広げる必要がある。量子力学計算で1,000から10万原子の大規模な系を扱い、動力学計算でナノ秒またはそれ以上の時間変化を解析できることを目標にする。

 具体的には、新しい計算手法として、リニアスケーリングDFT(密度汎関数法)の新プログラム「ONETEP」を開発するほか、量子力学と分子力学のハイブリッドとしてLOTF(Learn on The Fly)の採用、NEGF(Non-Equilibrium Green's Functions)法に基づく電荷移動の解析などを計画している。また、CASTEPやDMol3、VAMP、GULP、Discover、Forciteなどの計算エンジンをベースにした物性計算の拡張、バイオ/材料をミックスできるように力場を強化するなどの開発を行っていく。さらには、グラフィック機能として、ナノチューブやナノワイヤー、クラスターなどのモデルビルダー、原子間力顕微鏡(AFM)画像の取り扱いなどもできるようにする。

 なお、ナノテクコンソーシアムのロードマップを別表に示したが、開発案件の選択や優先順位付けなどは参加メンバーの意向が反映されることになっている。今秋までにはいくつかのメンバー企業と契約がまとまる見通しで、同社では日本からの参加にも大きな期待を抱いている。

ナノテクノロジーコンソーシアムのワークプラン

資料:アクセルリス

エリアA エリアB エリアC エリアD エリアE エリアF
1 ONETEP testing and development Reactive force field first release via GULP Electron transport first release   Nanotube and cluster buliders, electronics properties, analysis UI   
2 First ONETEP release Reactive force field enhancements, LOTF validation Enhancements Classical force field enhancements Vibrational properties UI, adsorption protocol STM tools
3 ONETEP enhancements LOTF release Enhancements Classical force field enhancements SAM protocol, workfunction, band offset protocol AFM tools