アドバンスソフトが戦略的基盤ソフトの解説書を刊行

ProteinDFやABINIT-MPなど4本をピックアップ、試用版CD-ROM付き

 2004.09.02−アドバンスソフトは、文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」プロジェクトで作成されている先端シミュレーションソフトを利用するために役立つ解説書を刊行した。たん白質を対象にした量子化学計算プログラム「ProteinDF」と「ABINIT-MP」、第一原理計算シミュレーター「PHASE&CIAO」、流体解析ソフト「FrontFlow/red」をそれぞれ解説した4冊があり、試用版のソフトウエア本体をCD-ROMに収録しているため、学んだ事柄を実際に試してみることが可能。価格は各3,150円。

 「戦略的基盤ソフト」プロジェクトは2002年度からスタートし、7つのワーキンググループに分かれて開発を進めており、昨年6月からプロジェクトのサイト(http://www.fsis.iis.u-tokyo.ac.jp)を通して開発成果のプログラムが順次公開されてきている。

 今回の解説書の対象になった4本もその中に含まれているが、開発途上であるためドキュメント類もまだ十分に整備されておらず、一般の研究者が自分でダウンロードして使いこなすには敷居が高いのが現状だったという。このため、理論の背景を説明するとともに、具体的な例題などを用いてわかりやすく解説することで、それぞれのプログラムの普及をスムーズにさせようという目的がある。

 アドバンスソフトは、同プロジェクトの開発成果を商用化する権利を持っており、今後の商用版の潜在ユーザーの裾野を広げる狙いで、今回の解説書を刊行した。

 まず1冊目は「タンパク質量子化学計算−ProteinDFの夢と実現−」で、監修は柏木浩と佐藤文俊。 ProteinDFは世界で初めて百残基規模の金属たん白質の全電子計算に成功したプログラムだが、実際に計算を実行するためには物理学・化学・生物学・情報科学などの幅広い知識が必要とされる。そこで、この本ではできるだけ数式を割愛し、平易な表現や身近な例を取り上げることで、修士課程の学生でも十分な理解が得られるように工夫したという。一方で、後半部では専門家向けの詳細な解説も試みており、たん白質の量子化学計算に関心を持つ幅広い研究者に受け入れらる内容となっている。

 2冊目の「フラグメント分子軌道法入門−ABINIT-MPによるタンパク質の非経験的量子化学計算−」は、たん白質やDNAなどの巨大分子や多数の分子を含む系のエネルギーを高速・高精度に計算するABINIT-MPの解説書。ソフトウエアのインストールから、実際にたん白質と低分子化合物との相互作用を解析するまでをわかりやすく説明している。生体高分子の古典的な解析にあきたらない研究者・学生の入門書として最適だという。著書は中野達也ほか。

 3冊目は「第一原理シミュレーター入門−PHASE&CIAO−」。第一原理計算シミュレーターPHASEと、第一原理擬ポテンシャル作成シミュレーターCIAOの理論的な背景を概説したのち、計算環境の設定方法や具体的な例題の計算を取り上げている。半導体、絶縁体、金属、磁性材料など、多様な物質の示す多様な現象の第一原理的な解析が可能。結晶やアモルファスなどの三次元構造に加え、表面・界面などの二次元構造、クラスター・分子などの孤立系にも適用できる。著者は山本武範ほか。

 4冊目は「次世代流体解析ソフトウエアAdvance/FrontFlow/redを用いた数値計算」で、小林敏雄監修。 FrontFlow/redは乱流現象の予測と制御がポイントになるエネルギー流動をメインターゲットとし、ラージ・エディ・シミュレーションをベースとする数値解析モデリングを行うことができる。具体的には、熱エネルギー流動、流体騒音/流体振動、混相流・反応流などの複雑な流体現象に応用することが可能。この本では、アドバンスソフトが改良したAdvance/FrontFlow/redの基本機能を紹介しつつ、その基礎方程式や境界条件、数値解法、入出力形式などが解説されている。

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