富士通が電子合成実験ノートソリューション
手書きよりも高速な入力支援、研究業務改革に威力
2004.08.20−富士通は、製薬・化学会社などの研究開発業務を革新する新ソリューションとして、電子合成実験ノートシステム「CS Eノートブック・エンタープライズ」を9月から本格的に販売開始する。手書きの実験ノートを電子化して置き換えるもので、過去の合成実験ノウハウの有効活用を促すとともに、業務上のボトルネック解消やムダな実験の排除などに効果がある。実験をしたらノートを付けるということは研究における業務フローに組み込まれた作業であり、同社ではシステムダウンが許されないミッションクリティカルなアプリケーションとして、エンタープライズレベルでのシステム構築・サポート体制をとっていく。
近年、研究用機器の機械化・情報化が進み、実験がハイスループット化してきている。できるだけ多くの実験を行い、大量のデータを利用して研究の指針とするのが最近のスタイルだが、一方で実験ノートへの記述は昔ながらの紙と手で行われているため、この手作業が全体のボトルネックとなっているという。米国eノートブックシステム協会(CENSA)の調べによると、合成研究者のうち1週間に実験ノートを300分以上閲覧するという回答者が最も多く、古いノートの中のデータが必要になる頻度は毎週または毎月という回答が大半を占めた。富士通独自の調査でも、ノートを付けるために毎日平均2時間を費やしているという実態があった。
今回の「Eノートブック・エンタープライズ」は、米ケンブリッジソフト(CS)が開発したパッケージで、ここ数年でメルクやアムジェン、グラクソスミスクライン、ファイザーなど欧米の製薬大手に急速に普及。とくに、メルクはグローバルライセンスで世界的に全面採用しているという。
電子ノート自体は新しいものではないが、手で書いた方が速いなどの実態があってなかなか普及しなかった。そこで、CS社のEノートブックは入力のしやすさを徹底的に追求。テンプレート機能、モル数や質量などの自動化学量計算、オートテキストなどの入力支援機能を搭載しており、手書きよりも高速な入力を実現した。使いなれたワードやエクセルをそのままノート内に統合できるという特徴もある。検索機能も強力で、構造式を利用できるほか、ワードやエクセルの中身まで全文検索の対象にすることができる。
また、試薬カタログのChemACXから構造式を転記したり、ACD社の計測データ統合管理システムからスペクトル図を取り込んだり、使用した試薬を薬品在庫管理システムから引き当てたり、合成した化合物情報をMDL社のISISに登録したりするなど、外部システムとの柔軟な連携を通して業務効率を高めることが可能である。
情報はすべてオラクル(Oracle9i)内に格納されるので、ユーザー認証のセキュリティを堅牢にできるとともに、柔軟な情報共有を設定できる。ノートブックの履歴、記載内容の変更履歴の完全監査・証跡機能もあり、米食品医薬品局(FDA)の電子記録に関する規格である21CFRパート11に完全対応している。
システムはウェブベースで構築されており、クライアントはウェブブラウザーが利用できる。価格は5シートで300万円(パート11対応は360万円)、125シートで4,200万円(同5,000万円)。3年間で10億円の販売を見込んでいる。
富士通が今回提供するのはバージョン8.5になるが、秋から冬にかけてリリースが予定されているバージョン9.0は完全日本語対応(V8.5では一部に文字化けが生じることが確認されている)を実現するほか、ウェブがオフライン状態でもノートを作成・更新できる機能を追加する。またNuGenesisやCyberLabなどのLIMSとの連携も可能になる。