ヒューリンクスがニューラルネット利用物性予測ソフトChemBrainを発売

化学DBを利用して自己学習、柔軟性・適応性に優れる

 2004.09.07−ヒューリンクスは、スイスのエキスパートソフト社(ラインハルト・ソワー社長)が開発した化学データベース(DB)とニューラルネットワークを利用した物性予測システム「ChemBrain」を本格的に発売した。DBを読み込んで学習用のデータセットにできることが特徴で、幅広い化合物の系に対する柔軟性や適応性に優れている。Windowsで簡単に利用でき、ソフト価格は20万6,000円。製薬会社の研究所向けなどに初年度500本の販売を見込んでいる。

 ChemBrainは本国でも3月に製品化されたばかりの新しいソフトだが、すでに欧州を中心に4,000本の販売実績をあげているという。ニューラルネットを利用した物性予測ツールはこれまでにもあったが、ほとんどは学習済みの予測専用システムであり、学習セットが自社の研究で調べたい系統の化合物に合っていないなどの問題もあって広く普及するまでには至らなかった。

 今回の製品は、化学DB機能とニューラルネット機能を組み合わせた点でユニークであり、物性予測の際にDBを利用する。システムが自動的に最適なニューラルネットアーキテクチャーを選択し、DB内のデータを利用して自己学習を行う。予測結果は、学習に利用された化合物のマップと同時に表示されるので、調べたい物性と化学構造との相関を視覚的に把握することも可能。

 標準装備の化学DBには、約2,500化合物のデータが登録されているが、外部データのインポート機能も用意されている。データ項目も自由に追加でき、部分構造検索や類似構造検索など、通常の化学DBソフトとしても高度な機能を持っている。

 ヒューリンクスでは、開発元と協力して、あらかじめ特定の物性向けに学習済みの予測専用システムに仕上げたり、ユーザーニーズに合わせたてカスタマイズをしたりするなど、単なるパッケージ販売にとどまらない事業に発展させていく考えである。

 なお、エキスパートソフト製品には有機分子の光学特性を計算できる量子化学プログラム「PiSystems」も同時販売している。UVスペクトル、色、電荷および結合の変化、遷移モーメント、置換の影響など、電子励起を考慮に入れた効果を解析することが可能。計算理論はSCF-CI法をベースに、π原子の反復の電気陰性度の変化によって拡張されているという。こちらも本国では3月に発売されて以来、2,500本の販売実績をあげており、ヒューリンクスでは初年度に1,000本の販売を目指していく。価格は8万7,000円。