日本ユニシスが北大らと新発想のSBDD開発プロジェクト
“誘導適合”の考え方を導入、抗がん剤候補発見目指す
2004.08.10−日本ユニシスは9日、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業に応募し、北海道大学をはじめとする1大学/5企業のプロジェクトとして採択されたと発表した。名称は「NMR(核磁気共鳴)スクリーニングと誘導適合構造解析に基づく抗がん剤デザイン」で、2006年3月末までに新しい効果的な創薬研究手法の確立を目指す。医薬候補化合物とそのターゲットになるたん白質との両方の分子構造を変化させて、精密な結合状態を解析する“誘導適合”の考え方を盛り込んだことが最大の特徴で、新発想のストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)につながると期待される。
今回のプロジェクトは、日本ユニシス北海道支店がコンソーシアム管理法人となり、北海道大学の稲垣冬彦教授および松田彰教授の研究室、さらに札幌に拠点を置く4企業であるサイエンス・テクノロジー・システムズ(STS、福島信弘社長)、シーズ・ラボ(山田二郎社長)、ジェネティックラボ(堀川武晴社長)、生物有機化学研究所(橋金作社長)が共同で研究を行う。
研究グループは、昨年度に開発したNMR利用のたん白質立体構造決定自動化システム「Olivia」(稲垣研究室)を活用し、標的たん白質に結合する医薬候補化合物を実際にスクリーニングする研究を行う。また、数種類の抗がん剤候補を臨床試験に進めた実績を持つ松田研究室の有機合成技術を取り入れることにより、具体的な抗がん剤候補物質の発見を目指していく。
近年、標的たん白質の構造に適合する医薬品を探索する手法がSBDDと呼ばれて注目されているが、実際の成功例は数例にとどまっているのが現状だという。研究グループは、その要因として薬物側とたん白質側の構造が結合に際してそれぞれ変化することを考慮に入れていないことが問題だったと指摘。今回のプロジェクトでは、生体内に近い溶液中の条件で“誘導適合”を解析するシステムの構築を目指す。
プロジェクト終了後には、日本ユニシスを含むコンソーシアムメンバーを中心に、今回の技術成果を生かした創薬支援サービスを事業化する計画。たん白質構造解析受託サービス、リード化合物探索支援サービス、誘導適合構造解析受託サービスなどを提供する。事業化に際しては、三井物産の販売チャンネルを加えながらワールドワイドなサービス展開を推進していくという。
なお、Oliviaも経産省の同事業に採択されて開発したもので、やはり日本ユニシスが管理法人となり、シーズ・ラボ、生物有機化学研究所、オープンループ、ほくでん情報テクノロジーが参加した。