マイクロソフトのローディング社長が2005年度方針

セキュリティとLinux対策が最大課題、公取委勧告には適法性主張

 2004.08.13−マイクロソフト日本法人のマイケル・ローディング社長は、7月から同社の2005年度がスタートしたことを受け、新年度の経営方針に関する記者説明会を開催した。ローディング社長は最大の課題として、セキュリティ問題とLinuxなどとの競合を取り上げ、課題解決への自信を示した。また製品やサービスの面では、日本市場の状況やニーズに合わせた戦略を推進していくと表明した。

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 ローディング社長は、セキュリティに関して「昨年度は当社にとっても、業界全体にとっても大きな警鐘となった1年だったと思う。われわれがソフトウエアの品質向上の努力を払うとともに、業界全体が一致協力することも必要だ。この1年でかなりの前進がみられたが、依然として最大の課題と認識して今年度も取り組んでいきたい」とした。それと同時に、「企業ユーザーなどではソフトを最新版にバージョンアップしていないところが多い。それでは、十分なセキュリティが保障されないし、製品の新しい価値や機能性も生かせない」と述べ、早めにバージョンアップしてほしいとの意向を示した。

 ローディング社長は、「ちょうど1年前に“ブラスター(Blaster)ワーム”事件が発生したが、そのとき私はバカンスでフランスにいてたいへんなことになった。今年はそういうことは起きないと信じているし、万一の場合の対策も万全だが、今年のこの時期は東京にいることにする」とジョークを飛ばす余裕もあった。安全なインターネット環境を整備することは顧客満足度(CS)向上の大きな要素になるとしており、政府・自治体、教育機関、業界団体との協力を通して、各種の対策や啓もう活動などを展開していくという。

 次に、第2の課題はLinuxとの競合。「ここ数年で市場での論議がずい分変わってきたように思う。2年前は完全な感情論で、事実や現実に基づいていない論議がほとんどだった。しかし、この1年間はWindowsとLinuxとのプラットホームにおける個々の機能性や特徴に目が向けられるようになってきた。さらにここへきて、本当の価値に基づいた議論に変わってきている。すなわち、TCO、セキュリティ、開発生産性、相互運用性、知的財産などの観点から価値を判断しようというもので、これは当社にとって有利だと思っている。これには、公平な第三者機関による証拠を示すことが重要で、2月から“Get the Facts 日本語サイト”(http://www.microsoft.com/japan/mscorp/facts/default.asp)の公開を始めた。これをみれば、賢明な選択をしていただけると思う」。

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 ローディング社長は、日本市場に合わせた独自の戦略展開についても強調した。日本特有のニーズに合わせた製品やサービスとしては、昨年11月に発売したグループ作業のコラボレーションツール「GroupBoardワークスペース」、今年の9月から販売開始する新製品で、電子的に名刺をやり取りする機能を持つ新しいオフィスファミリーの「インターコネクト2004」、今秋から提供開始するブログサービス「MSNスペース」、学生向けの開発者コミュニティ「SPOKE」などがある。

 ローディング社長は「本社の開発陣と密接に連携しながら、さらに日本市場に合わせた事業展開を進めたい」とした。

 最後に、社長としての抱負として、「統合された技術革新を通して、顧客とパートナーの持つ可能性を最大限に引き出す」、「働きやすい、働いてみたい会社にする」、「信頼される企業市民になる」−をあげた。

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 記者との質疑応答は、7月13日付けの公正取引委員会勧告に関する質問に集中した。パソコンメーカーとのWindowsの契約に盛り込まれている特許非係争条項(NAP)に違法性があると判断されたものだが、ローディング社長は「問題の条項は米国や欧州では合法とされていたが、IT業界の環境の変化や知的財産に関する考え方が進化したことにともない、今年2月に同条項を新しい契約からは削除している。製品ライフサイクルが続いているため、以前の条項が有効なままの契約もあるが、なぜいまになって日本でだけこれが問題視されるのかがわからない。公取委の活動は尊重し協力するが、勧告には応諾しない。前々から適法だったと訴えていくし、そのことをはっきり表明していく」という立場を示した。