2004年秋期CCS特集:ウェイブファンクション

教育市場で好調な伸び、化学者向けMOソフトとしてさらなる発展へ

 2004.12.13−ウェイブファンクションは、分子軌道法(MO)をベースにした使いやすいモデリングシステム「Spartan」の学生版が教育用途で好調。本格的に出荷開始してこの半年ほどで約200本を売り上げた。企業での研究用途でも引き合いは順調で、計算化学の入門用として導入するところが多い。確かに、分子軌道法ではGaussianが定番だが、同社ではGaussianが専門の計算化学者向けだとしても、Spartanは一般化学者にとって必要十分な機能を備えていると位置づけており、化学者のための本格的CCSとしてさらなる普及を図っていく考えだ。

 Spartanにおいては、開発者のウォーレン・ヒーリー社長(カリフォルニア大学名誉教授)自身が教育目的に利用したという実績があり、本人が定期的に来日してCCSを大学教育に使用するためのハンズオンセミナーをここ何年にもわたって実施してきている。ヒーリー社長が執筆した「計算有機化学入門」は東邦大学などで教科書に採用されているという。

 そうした地道な活動の成果がSpartanの教育分野での普及に結びついているわけだが、とくに学生版は機能を絞って10本/9万5,000円という低価格を実現した製品。ただ、教育内容によっては原子数などに制限がない通常版を導入するケースもあるようだ。

 大学への導入実績では、2001年から大規模に採用している明治大学の事例があるが、最近ではSpartanで授業を受けた卒業生が高校の化学の教師になって、その学校でSpartanの導入を検討するといった広がりも出てきているという。

 教育用途では、分子動力学法(MD)計算などを利用しながら豊富な例題を通して“分子の世界を探検”する「ODYSSEY」も製品化されているが、こちらは高校生から大学一般教養課程レベルを意識しているため、マニュアルやコンテンツの日本語化をきっちりと行って、来年4月ころから本格的に販売したい考えである。

 一方、高機能版のSpartan04では、データベース機能の充実に力を入れてきている。内蔵しているケンブリッジの結晶構造データに加え、スペクトルデータなども登録するために急ピッチで作業を続けている。実際に計算をしなくてもデータを引き出せるため、研究の時間短縮にも有効で、企業ユーザーからの関心も高い。