マイクロソフトTech・Ed 2005:S・ソマセガー氏基調講演

SQLサーバー2005など新機能を紹介、競合優位性をアピール

 2005.08.08−マイクロソフトは、2日から5日までの4日間、今年で11回目を迎えるデベロッパーズコンファレンス「Tech・Ed 2005」をパシフィコ横浜で開催した。3日には、「Get Ready for 2005!−マイクロソフトの次世代アプリケーションプラットホーム戦略」と題して基調講演が行われ、米マイクロソフトのデベロッパー部門コーポレートバイオスプレジデントであるS・ソマセガー氏が11月17日に発表を予定している新製品「SQLサーバー2005」および「ビジュアルスタジオ2005」などの新機能を紹介した。ソマセガー氏の話しは、“接続性”をキーワードにしたもので、ドットネット環境がすでに大きな成功を収めていることを強調しながら、競合製品に対する優位性を訴えた。

             ◇       ◇       ◇

 マイクロソフトは、今回の講演の中で同社の開発環境の基盤となる「SQLサーバー2005」と「ビジュアルスタジオ2005」の製品発表を今年の11月17日に行うと公表した(BizTalkサーバー2006も同日発表の予定)。これは、米国での発表日の10日後ということであり、日本語版の提供までのタイムラグがほとんどなくなってきていることがわかる。

 ソマセガー氏は、「アプリケーション開発の方法論が1990年代にオブジェクト指向からコンポーネントベースに変わるに際してわが社のビジュアルベーシックが登場し、開発者の世界を大きく広げた。2000年代はサービス指向の時代となり、ビジュアルスタジオのもとでXMLウェブサービズによるドットネット環境における分散開発を推し進めてきた。この5年間でドットネットの世界は大きな成功を遂げた」とし、新しいビジュアルスタジオ2005の紹介に入った。

 最新版では、開発生産性がさらに向上しており、ウェブアプリケーションに対してコーディングなしで新しい機能を簡単に追加したり、クリックひとつでクライアントアプリケーションを配布・展開できたりするなど、大半のケースで50−70%のコード削減を実現できるという。

 とくに、デモンストレーションを交えて強調されたのが、開発者をつないで生産性を上げる“ビジュアルスタジオ・チームシステム”である。設計者、開発者、テスト担当者、プロジェクト管理者など、アプリケーション開発にかかわるチームの各構成員の役割に応じた機能が提供され、開発ライフサイクル全体での包括的なサポートが可能。プロジェクトの各タスクの進み具合がリアルタイムで把握でき、管理者は使いなれた「マイクロソフトプロジェクト」の画面からプロジェクト進捗状況を視覚的に理解することもできる。進化したモデリング機能は、サービス指向型の分散アプリケーションのアーキテクチャー設計、ネットワークやサーバーの論理設計を簡単に行うことができるようになっており、それぞれのサービスが稼働するサーバーの設定や構成と関連づけてデザインできるため、機能要件と運用条件を設計段階で検証することも容易になるという。

 ビジュアルスタジオ2005は、テクノロジープレビュー日本語版がMSDN(マイクロソフトデベロッパーズネットワーク)を通してすでに入手可能となっている。

             ◇       ◇       ◇

 一方、SQLサーバー2005については、「ビジネスの洞察力を格段に向上させることができる」とソマセガー氏。「SQLサーバーはOLAPための優れたプラットホームとして完全に定着したが、今度のSQLサーバー2005ではETL(抽出・変換・格納)やデータマイニング分野でもトップの地位を確立したい」とし、ビジネスインテリジェンス機能に焦点を当てたデモンストレーションを披露した。

 SQLサーバー2005インテグレーションサービスとビジュアルスタジオ2005を組み合わせて、エクセルからデータを抽出してSQLサーバーに移し、データ統合を行って、レポートに埋め込んで出力するというデモが行われた。また、アンケート集計では、記入項目に欠損のあるデータが多くなるが、過去のデータを用いて「こういうプロフィールの人はこの選択肢を選ぶ確率が高い」などの予測モデルを作成し、それに基づいてアンケートのデータの欠損を埋めて集計し直すというデモも目を引いた。傾向を正しくとらえたい時などに威力を発揮するようだ。

 さらに、ソマセガー氏は、SQLサーバー2005の高度な運用環境として可用性やセキュリティに言及するとともに、現行のSQLサーバー2000よりも高い性能を示すいくつかのベンチマーク結果も紹介した。

 続いてのデモンストレーションは、今年末から来年初めにかけてリリースが予定されているWindowsサーバー2003 R2とSQLサーバー2005を組み合わせたもので、データベースミラーリングが簡単に実現できることが示された。ウィザード形式で、複数のマシンをクラスター化してミラーリングの設定を行うことが可能。“プリンシパルマシン”と“ミラーマシン”は同一クラスのハードウエアである必要はなく、ある程度は性能差があってもかまわない。ただ、2台の稼働状況を監視する“ウィットネスマシン”を置く必要があるため、最小で3台からなる構成となる。

 デモでは、ミラーリングを設定したあと、実際にステージ上でプリンシパルマシンを爆発させるという派手な演出を行ったが、その直後に処理は無事にミラーマシンに引き継がれた。ソマセガー氏によると、ウィットネスマシンと待機中のミラーマシンのWindowsのライセンスはフリーであり、「いまやミラーリングは大規模ユーザーだけの特権ではなく、中小ユーザーも気軽にミラーリングを試して、可用性を高めてもらえる」とした。

 ステージ上では、続いてのデモでWindowsサーバー2003 R2の新機能の1つであるADFS(アクティブディレクトリーフェデレーションサービス)が紹介された。これは、B2BやB2Cのコラボレーションを安全かつ簡便に実現するための機能。通常、外部のパートナーなどに特定のアプリケーションへのログインを許す場合は、IDとパスワードを使って認証を行う。しかし、ADFSでは双方に設置されたフェデレーションサーバー同士が信頼関係を確立するので、利用者はパスワード入力の手間から解放される。

 設定も簡単で、ウィザードで相手を信頼できるパートナーとして登録し、公開するアプリケーションを選び、そのアプリが動作しているIISサーバー内にADFSエージェントをインストールするだけ。アカウント管理がアクティブディレクトリーを基盤にしているため、相手の社内で担当者が異動や退職した場合でも、こちらでそれを気にする必要はない。相手側でアカウントが削除されてしまえば、それ以後はアプリケーションにログインすることはできなくなる。

             ◇       ◇       ◇

 講演の最後に、ソマセガー氏は、「SQLサーバーはデータベース市場で売り上げベースではIBMの34.1%、オラクル33.7%に次いで、20%で第3位。ところが、ライセンス本数ベースでは、IBMが9%から7%へ、オラクルが29%から25%へとシェアを落としているのに対し、当社は34%から41%へと伸びている。ドットネットかJavaかという論争もほぼ決着し、いまやフォーチュン100企業の92%、グローバル100企業の95%がドットネットを採用している」と述べ、価格面での比較を示した。

 それによると、SQLサーバー2005とOracle10g、DB2とを比べた時、データベースエンジンとしてのコアの価格はSQLサーバー2万5,000ドル、10gが4万ドル、DB2も2万5,000ドルと大差ないが、運用支援や高可用性、ビジネスインテリジェンス、マルチコアといった機能を追加したトータルコストでは、SQLサーバーが変わらず2万5,000ドルなのに対し、10gは23万2,000ドル、DB2は33万ドルに跳ね上がる。

 ビジュアルスタジオ2005も、開発環境としては8,200ドルであり、IBMやその他のJava系ベンダーが採用しているオープンソースのEclipseが無料であることに比べれば高いが、ビジネスインテリジェンスやウェブシミュレーションテストツール、2,500同時ユーザーの負荷テスト、変更管理、プロジェクト管理を加えると、トータルコストではビジュアルスタジオの3万300ドルに対して、IBMが10万4,300ドル、その他のJavaベンダーは14万ドルと大きな差が出るという。

 ソマセガー氏は、「SQLサーバー2005もビジュアルスタジオ2005も、すでにマイクロソフト社内で実際のシステムに利用して、エンタープライズレベルでの安定した使用に耐えることを実証済みであり、リリースされたら安心して採用してもらいたい」として講演を終えた。