ElsevierMDL日本法人:兵頭喜文新社長インタビュー

顧客視点でソリューション展開、パートナー戦略も前進

 2006.06.07−情報化学技術を中心に創薬支援の統合プラットホームを提供しているのが米ElsevierMDL(エルゼビアMDL)。コンピューターケミストリー分野の最古参のベンダーであり、1996年に100%出資で日本法人を設立している。10周年を迎え、初の日本人社長に就任する予定の兵頭喜文氏に、今後の事業戦略・経営戦略について聞いた。

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 − エルゼビアMDLに参加しての印象は。

「非常に堅実な会社だと思った。設立して27年にもなるが、いまでも安定的に成長している。それにミッションステートメントがすばらしい。新薬開発のスピードアップを通じて人々の健康、人類社会に貢献するということで、こうした次元の高い意識はやりがいにつながる」

 − 逆に、課題だと感じた部分はありますか。

 「ややテクノロジー偏重の傾向がみられた点だろう。顧客に対して自社のテクノロジーの優れたところばかりを紹介するのではなく、顧客が抱えている問題が何か、またどうすれば顧客の研究開発を推進させることができるかなど、顧客視点で考えることが重要。今後は、具体的な業務アプリケーションやソリューションにフォーカスすることを大切にしたい」

 − その意味では、新しいプラットホーム製品であるIsentrisの普及が最大の使命になりますね。

 「その通りだ。 Isentrisは、新薬の研究開発プロセス全体を通じて、ワークフローやコンテンツ、アプリケーションの統合を実現する。単一のユーザーインターフェースでいろいろなソフトやデータベースを駆使することが可能。研究業務の進展に沿ったかたちで必要な時に必要な情報を自動的に集めてくる“コンテンツ・イン・コンテキスト”を目指しており、Isentrisの導入こそが顧客に成功をもたらすと確信している」

 − ただ、日本では以前の製品であるクライアント/サーバー型のISISから新しいIsentrisへの移行が遅れていますね。

 「確かに、国内の製薬業界は、ほかに比べて新技術導入に慎重な傾向がある。オープンアーキテクチャーのIsentrisは、欧米ではすでに28社の移行実績があり、優れた成功事例も出てきている。日本の顧客は、欧米のメガファーマの動きをある意味で注視しているところがあるので、これからIsentris普及のペースを上げていきたい」

 − その中で日本市場独自の展開もありますか。

 「例えば、試薬在庫管理アプリケーションのMDLロジスティクスは、日本の法規制に準拠する必要があるため、実際の顧客と共同開発を行っている。フェーズワンのシステム化は完成し、8月には本格稼働に入る予定だ。これをベースに製品版につなげたい」

 − 国内のパートナー戦略はどうでしょう。

 「直販に移行して5年目になるが、ソリューション志向を推し進めるためには、当社だけですべてをカバーすることはできない。外部のシステムインテグレーターやアプリケーションベンダーとの協業が重要になる。ワールドワイドで展開している“Isentrisアライアンス”のスキーマからは外れるが、実際の案件ベースで7−10くらいのプロジェクトが走っており、CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)をはじめ5社ほどとの協力体制を築いている」

 − 日本法人のトップとして、社内の組織面で気をつけていることはありますか。

 「やはり専門職が多いので社内の情報共有が進んでいないと感じた。透明性を上げ、風通しの良い組織にしたい。それに、小さい会社なので、みんなには専門分野を1つに限定するなと言っている。化学は得意だが生物はわからないではダメ。2つか3つはカバーできるようになってほしい。私の経営理念は加点主義。減点はしないので、失敗を恐れずに一丸となってチャレンジしていきたい」

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 兵頭喜文氏は、SASインスティチュート、ハミングバード、アーバーテキストなどの日本法人の社長を歴任。SAS時代に、製薬業向けのビジネスの経験がある。