菱化システムが医薬品の作用メカニズムを予測するBioEpisteme発売
スペインのプロウス社から販売権、260種以上のメカニズムを判定
2006.05.11−菱化システムは、スペインのプロウスインスティチュートが開発した創薬支援システム「BioEpisteme」(バイオエピステメ)の国内販売権を取得し、本格的な販売活動を開始した。任意の化合物が、医薬品としてどのような作用メカニズムを持つ可能性があるのかを予測することができる世界初の商用ソフトで、判定できる作用メカニズムは全部で260種類以上。新薬開発のバーチャルスクリーニングに応用できるほか、過去に研究した化合物に別の可能性を見いだすことでも役に立つ。システムはウェブベースで使いやすく、使用ライセンスは初年度2,000万円から。大手製薬メーカーを中心に売り込んでいく。
BioEpistemeは、製薬業界向けの総合情報サービスを提供しているプロウスサイエンスグループが開発した初めてのソフトウエア製品。膨大な医薬品情報のコンテンツを保有する強みを生かし、予測モデルを構築するために10万化合物以上のデータを使用したという。
現在予測可能な作用メカニズムは、ACEインヒビターやHIVプロテアーゼインヒビター、アンチエストロジェン、ガンマセレクターゼインヒビター、AMPAアゴニスト、テロメラーゼインヒビター、インテグリンレセプターアンタゴニスト、VEGFインヒビター、PPARアルファアゴニスト、KATPチャンネルブロッカー、ソディウムチャンネルブロッカーなど260種類以上におよんでいるが、これを300数10種類にまで広げる計画。
開発には、菱化システムが販売権を持つCCG社の統合型コンピューターケミストリーシステム「MOE」が利用されており、予測エンジン自体はプロウス独自のものだが、解析のためのディスクリプター計算などにMOEの機能を用いる。このため、BioEpistemeを使用する際にはMOEが必要ということになる。
システムはウェブアーキテクチャーに対応しており、ブラウザーから分子構造を入力したり、MOLファイルを読み込ませたりして、簡単に予測を行うことが可能。結果は、可能性の高いメカニズム順にリスト表示され、同じメカニズムを持つ化合物がデータベース内に存在する場合には予測に使われたディスクリプターの種類を知ることができる。また、プロウスの医薬情報ポータルサービス「インテグリティ」へのリンクも付されているため、化合物や作用メカニズムに関する詳細な知識を簡単に収集することが可能。
また、コマンドラインモジュールとして予測エンジンをキックすることができるため、菱化システムではデータ解析のためのワークフローツールである「KDE」(インフォセンス社)に組み込んで提供することも行う。ウェブインターフェースは大量のバーチャルスクリーニングには不向きだが、KDEと統合することで、大量の化合物をバッチ処理することが可能になる。実験を行う前に合理的に優先順位付けを行うことで、実験の効率を高めることができる。
BioEpistemeは現在は作用メカニズムの予測専門のシステムだが、将来的には同様の仕組みでADME(吸収・分布・代謝・排出)/毒性などの予測に取り組む計画もあるようだ。
なお、化合物の構造から医薬品としての作用メカニズムを予測するプログラムは、「PASS」(http://www.akosgmbh.de/pass/PASS_OV_text.htm)と呼ばれるアカデミックコードが存在するが、ベンチマークでBioEpistemeの方が優れた結果を出しているという。(写真参照、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12546557&dopt=Abstract)