企業向け検索市場が本格化へ
オラクルとグーグルが先陣争いで火花、新製品を日本市場に投入
2006.04.14−企業向けの検索市場が本格的に立ち上がりそうだ。日本オラクルとグーグルが12日、それぞれ製品のリリースを発表した。最近では社内に分散した知識や情報を共有化するために企業情報ポータル(EIP)などの導入が活発化しているが、検索機能が弱いとされる場合も多いため、それを補完する技術としても注目できる。両社の製品とも「15分でインストールから設定までを行える」(オラクル)、「ケーブルを差して30分でセットアップ完了する」(グーグル)と導入が容易なことが特徴。企業向け検索システムはまさにこれからの市場であり、今後の先陣争いが注目される。
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企業内の情報を横断検索する際に難しいのが、業務アプリケーションのデータとしてデータベース内に正式に格納された定型的な“構造化データ”と、ワードやエクセル、パワーポイントなどのオフィス文書やHTML/掲示板/ブログなどのウェブコンテンツを含む非定型の“非構造化データ”が混在していること。通常のデータベース検索のアルゴリズムではこれらを同列に検索することはできない。
また、昨年あたりから自分のパソコン内のデータを簡単に検索できる「Googleデスクトップ検索」や「Windowsデスクトップサーチ」などのデスクトップ検索ツールが普及。同様のウェブインターフェースで、ファイル形式を気にせず、社内の情報も検索したいというニーズが高まってきているという状況も背景にある。
オラクルが12日から提供開始した「オラクルセキュアエンタープライズサーチ10g」は、Linuxマシン上で稼働する検索エンジンソフトウエアで、価格はCPUライセンスで375万円。検索時にはログインを行うため、オラクルのディレクトリー技術およびID管理ツールと組み合わせれば、ユーザー権限に応じて閲覧可能な文書だけを検索結果に反映させることができるなど、セキュリティを考慮した仕様になっている。
12日の記者説明会におけるデモンストレーションでは、検索対象のカテゴリーが「ポータル」、「データベース」、「社内」、「ファイルサーバー」、「ブログ」、「メールサーバー」に分かれていた。ただ、すべてを横断した検索も可能で、自分のパソコン内に検索ワードに合致したドキュメントがあれば、Googleデスクトップ検索の結果を合わせて反映させることができるようになっている。
さまざまなファイル形式を検索対象に加えるためのクローラー開発が容易なことも特徴だとしており、例えば顧客の要望によりSQLサーバー用のクローラーを8時間で作成した実績があるという。クローラー開発のツールや情報はすべてオープンにしており、自社あるいはパートナー、ユーザーが作成したクローラーをできるだけ集めて公開していく方針。1年ほどでほとんどのファイル形式への対応が完了するとした。
販売に関しては、オラクルのパートナーである大手システムインテグレーター各社が担当する。EIP構築案件の中に検索システムとして組み込まれると期待されるほか、適当なサーバーと一体化させて検索専用アプライアンスとして販売していくことにも力を入れる考え。「最初からセキュリティを重視すると敷居が高くなる。とにかく導入が簡単な製品なので、部門単位の情報共有ツールとしてまずは手軽に入れてもらいたい。実質初年度(2007年5月期)はこれ単独で10億円の販売を狙うが、導入後さらに発展的なニーズが生じてくる製品なので、ビジネスは周辺にかなり広がると思う」としている。
一方、グーグルが12日から発売したのはハードと検索エンジンを一体化した専用アプライアンスの新製品「Google Mini」(グーグルミニ)。同社は、2002年から企業向け検索アプライアンスの販売を開始し、日本でも昨年4月から出荷されている。今回の製品は、中小企業向けのエントリーモデルとなり、最大30万件までのドキュメントを検索対象にすることができる。現行の「Google検索アプライアンス」は150万ドキュメントに対応しているとともに、10台までを並列化することによって最大1,500万ドキュメントまでのスケーラビリティーを持つ。
Google Mini自体は米国で昨年1月に発表されたが、今回のものは日本で先行発売される最新モデルであり、米国での初期型に比べてサイズが半分、性能は25倍に強化されている。製品価格は検索対象が5万ドキュメントまでのライセンス条件で46万円。これ以外に10万、20万、30万ドキュメントのパッケージが用意される。基本的にサポートは2年間までで、それ以降はサポートなしで使い続けるか、新しい製品に買い替えてもらいたいという。販売は、三井情報開発とネットマークスが行う。また、NTTコミュニケーションズがホスティングサービスを展開する。
多国語のドキュメント検索に対応しており、ファイル形式は220種類をサポート。個人のパソコン内のファイル検索は「Googleデスクトップ検索」によって行われるが、この場合にはデスクトップでもエンタープライズ版(無償)を利用することができるという。また、複雑なセキュリティ機能は搭載していないが、コンテンツの閲覧を特定のグループ内だけに制限する“コレクション機能”を持っている。上位の「Google検索アプライアンス」には、保護されたコンテンツに対するアクセス制御機能がある。
12日の会見で、オラクルは「すでにいくつかの案件を進める中で、グーグルとの競合はなかった」としたが、これは市場がまだ本格化していないためだろう。グーグル側も「オラクルのような大企業が参入してくることによってこの市場が注目され、成長に勢いがつくと期待している」と歓迎を表明。ただ、「知名度やビジネスにおける信頼感はこっちの方が上。パートナーも強い」(オラクル)、「出荷されていないので実物を見ていないが、グーグルに似通った製品だと思われる。つまり、オリジナルか類似品のどちらを選ぶかという問題。ユーザーの選択は明白だろう」(グーグル)と火花も散らす。
「手軽なアプライアンス的に一気に販売を拡大できれば、うちが優位に立てる」(オラクル)とするように、これからのスタートダッシュがカギになりそうだ。