アドバンスソフトが土井プロジェクトのOCTAを事業化

計算エンジンの機能強化を実施、RSS21成果との連成解析実現へ

 2006.08.02−アドバンスソフトが、経済産業省プロジェクトで開発された高分子材料設計プラットホーム「OCTA」の事業化に乗り出した。文部科学省プロジェクト成果をベースにした既存製品群と統合し、国産コンピューターケミストリーシステム(CCS)のトータルソリューションとしての拡充を図る。OCTAに関しては、プロジェクトメンバーでもあった日本総研ソリューションズが先行して事業化を実施しているが、アドバンスソフトでは計算エンジン技術で独自性を発揮することで市場での共存を目指していく方針。同社の参入によって、OCTAの普及にさらなる弾みがつくか注目される。

 OCTAは、2002年3月まで実施された「高機能材料設計プラットホームの開発」(通称・土井プロジェクト)で開発されたもので、すべてのソースコードはOCTA管理委員会によってオープンソースソフトウエア(OSS)として管理され、現在もボランティアベースでバージョンアップが続けられている。

 今回、アドバンスソフトは、国産ソフトの振興という同社の基本理念に合致することや、既存の製品ラインを補完する位置にあることから、今年の4月にOCTA管理委員会より商用化の権利を取得したもの。商品名は「Advance/OCTA」で、とくに高分子のメソ領域の特性を解析するための四種類の計算エンジン群に注目した事業展開を目指す。

 具体的には、粗視化分子動力学法の「COGNAC」、レオロジーシミュレーター「PASTA」、動的平均場法の「SUSHI」、多相構造/分散構造シミュレーター「MUFFIN」−の4種類のエンジンを中心とした連成解析を発展させるため、文科省プロジェクト「革新的シミュレーションソフトウエアの研究開発」(RSS21)成果との統合を実現する。すでに製品化しているナノ材料向け第一原理計算プログラム「Advance/PHASE」、マクロ物性を解析するための流体解析ソフト「Advance/FrontFlow」、構造解析ソフト「Advance/STR」とのインターフェースを今年度中に完成させる。

 例えば、FrontFlowの流体計算結果をSUSHIの入力に利用し、高分子のずり流動の解析を行ったり、SUSHIあるいはCOGNACのDPD計算で得られた高分子の相分離構造の界面形状を切り出し、メッシュジェネレーターを介してFrontSTRで弾性挙動を解析したりするなどの応用が考えられるという。このように、OCTAの計算エンジン群とRSS21製品群とを組み合わせたかたちでの販売を進める。

 同社には、すでに連成解析のためのプラットホームとして「Advance/PSEワークベンチ」(主に構造と流体の連成解析のために開発されたもの)があるため、これを組み込むことによって、ソリューションとしてのユーザビリティーを高めようという計画も考慮されている。これも今年度中に完了させたいとしている。

 また、一般ユーザーがOSS版のOCTAをそのまま実際の研究テーマに適用することは難しいため、同社では解析対象に合わせたプログラムの修正・機能追加、並列化などのエンジンの機能強化、各種ソルバーとのカスタムインターフェース開発、解析業務のサポートなどの受託サービスにも積極的に取り組んでいく。とくに、並列化はCOGNACやSUSHIなどでニーズが高く、来年度以降に具体的な開発に入っていく。(ただし、同社が実施した解析エンジンに対する機能強化は、一般的なバグフィックスを除いてOSS版OCTAには反映されないことになっている)。

 製品の価格は、COGNACとSUSHIとPASTAは年間ライセンスで各100万円。これには、OSS版のライセンスとRSS21製品群とのインターフェース、そして技術サポート料が含まれる。MUFFINについては、実際には6本のプログラムで構成されることやRSS21製品群で代替できる場合もあるため、当面は受託サービスでのカスタマイズ素材としての利用に限っていく考えだ。

 一方、日本総研ソリューションズが昨年3月から「J-OCTA」の名称で事業化を先行させているが、アドバンスソフトではJ-OCTAがモデリング環境の充実を志向している点で方向性の違いがあるとしており、Advance/OCTAが解析エンジンの強化を目指すことで、うまく市場で共存していきたいとしている。