富士通が合成経路設計支援ソフトを新名称で新発売
独自作成の知識ベースを標準添付、3ステップまで一気に前駆体予測
2007.02.28−富士通は、有機合成経路設計支援ソフトウエアを機能強化、商品名を一新し、「SynthPath Explorer」(シンセパスエクスプローラー)バージョン1.0として、きょう28日から新発売する。目的の化学構造を入力すると、その化合物を得るための合成経路を3ステップまで自動的に導き出すことができる。東京大学の船津公人教授らのグループが開発した「AIPHOS」をベースにしたものだが、今回はプログラムを全面的に改良し、逆合成解析速度を4倍に高め、多くの合成前駆体を提案できるようにした。価格は200万円から。今後3年間に海外も合わせて100ライセンス、5億円の販売を見込む。
SynthPathエクスプローラーは、2004年2月に製品化した「AIPHOS/KOSP」をバージョンアップした製品。現在までの導入実績は数件にとどまっているが、大きな問題は逆合成のための知識ベースが付属していなかったことだという。システムには、反応情報データベース(DB)をRDファイル形式で読み込み、知識ベースに変換するコマンドラインツールが付属しているが、市販の反応DBではライセンス条件の制約で変換が許されない場合がほとんどであり、ユーザーが自分で反応情報を用意して知識ベースを独自に構築する必要があった。
このため、今回のSynthPathエクスプローラーでは、富士通自身が人名付きの著明な反応や基本的な系統の化合物を集めて、2つの知識ベース(合計2,400件の反応情報を収録)を作成し、標準添付することにした。これにより、導入後すぐに利用できるとともに、社内の反応DBを知識ベースに変えて組み込むことで、さらなるグレードアップを図ることも可能。その他、利用可能な反応DBとして、ロシアのVINITI研究所で収集された250万件の反応情報からインフォケム社の技術で選抜した約6万件の「ChemReact68」を60万円で提供する。
また、以前の製品では前駆体の予測は逆合成ワンステップごとに行う仕様だったが、今回は一気に3ステップを予測できるようにした。合成経路の組み合わせを一覧しつつ、個々の反応式を表示・確認することで、妥当な経路の考察に要する時間を大幅に短縮することができる。
実際には、前駆体生成プログラムを全面改良し、処理速度を4倍に高めることによって、このマルチステップ探索機能が実現されたという。この改良には船津教授の助言をもらっているが、教授らが別途提供しているAIPHOSにこのプログラムが反映されることはないということだ。
システムの動作環境は、Windowsサーバーを用いたイントラネット型で、データベースやウェブサーバーはオープンソースを採用している。ソフトウエア価格の詳細は、1ユーザーライセンスで200万円、5ユーザー300万円、10ユーザー500万円、無制限800万円となっている。