アドバンスソフトがたん白質全電子計算ソフトの最新版2.0を発売
GUIを全面リニューアル、小規模PCクラスターでも利用可能に
2007.04.10−アドバンスソフトは、たん白質を対象にした量子化学計算ソフトウエア「Advance/ProteinDF」の最新バージョン2.0を製品化し、販売開始した。これまでは、計算部分だけで専門家以外には使いにくかったが、今回から本格的なGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を追加し、操作性・利便性を高めた。メモリーの使用効率も改善されたことで、計算環境面での敷居も低くなった。ソフト価格は年間ライセンスで100万円。
この製品は、文部科学省プロジェクト「革新的シミュレーションソフトウエアの研究開発」(RSS21)の成果を商用化したもの。世界にも例をみないたん白質向けの量子化学ソフトで、密度汎関数法(DFT)を応用している。とくに、計算を効率良く収束させるために擬カノニカル局在化軌道(QCLO)を用いた独特な計算方法を採用したことが特徴。
計算は通常4段階のステップに分けて行われる。ステップ1で、たん白質のアミノ酸配列に基づいて1残基ずつの電子密度を求める。ステップ2で3残基ずつのペプチド単位でのSCF(自己無撞着場法)計算を行い、3残基ペプチドのQCLOを求める。ステップ3では、これを初期値としてペプチド鎖を大きくしながらフラグメントごとのQCLOを求め、最後のステップ4でこれをまとめて、たん白質全体の電子構造を評価する。
今回の新GUI「ProteinEditor」では、このQCLO計算シナリオを自動生成または視覚的に編集する機能を持ち、計算の実行支援や収束過程の情報を表示することができる。また、これまでは計算の準備として、読み込んだプロテインデータバンク(PDB)データに水素を付加したり、エネルギー極小化によって構造を最適化したりするために外部のソフトを使う必要があった。計算結果の解析でも、静電ポテンシャルなどを表示するために外部ソフトを組み合わせなければならなかったが、今回のGUIにはこれらの機能が完全に組み込まれている。
一方、以前のバージョンには、計算に巨大なメモリーを消費するという欠点もあった。例えば、アミノ酸が100残基のサイズのたん白質を計算する場合、計算機にはCPU当たりに3ギガバイトのメモリーを搭載する必要があり、導入の敷居を高くする要因になっていたという。
これに対し、今回、プログラムのメモリー使用効率を改善したことにより、システム全体で3ギガバイトのメモリーがあれば計算が実行できるようになった。一般的な構成のPCクラスターでたん白質の全電子計算が可能になったことで、よりいっそうの普及が期待される。