米ケンブリッジソフトが電子実験ノート普及で日本IBMと提携
コンサルから運用支援まで一貫サポート、国内市場開拓へ足がかり
2007.04.18−米ケンブリッジソフト(CS)は、国内の製薬会社を対象にした電子実験ノートブック事業を拡大するため、日本IBMと正式な業務提携契約を締結した。日本IBMがグループとしての総合力を生かし、業務コンサルティングからシステム構築、システム運用支援までのトータルサポートを提供する。電子ノートは、欧米のメガファーマがこの1−2年で先行して導入を進めており、国内でもプロジェクトが本格化するムードが高まっている。CS社の「E-Notebook」は欧米では業界トップの実績を持つとされ、今回の提携を通して一気に国内での足場を築きたい考え。
電子実験ノートは、医薬品研究所の合成部門や生物部門などの研究者が日常的につける紙の実験ノートを電子媒体に置き換えたもの。一種の業務日報のように研究の進捗を明らかにするだけでなく、重要な発明や発見が得られた場合、それがいつ誰によって完成されたかを証明するための証拠ともなる。
CS社は、2000年から「E-Notebook」を製品化し、メルクやグラクソ・スミスクライン(GSK)、アストラゼネカなどに千ユーザー単位での導入実績を持っている。ここ数年は30−40%の高成長を達成。アストラゼネカでは、今年から850人の合成研究者を対象とした本格運用が始まっているが、導入に際したアセスメントでは電子ノートによって年間で5週間分の業務に相当する生産性向上が見込まれるとされたという。
ただ、電子ノートは通常のパッケージソフトとは違って、導入に当たっては研究部門だけでなく、知財部や管理部門も含めたワークフローの見直し、情報漏えいなどのセキュリティ対策が関係してくることも多い。こうしたビジネスルールの再構築をともなうコンサルティング、さらには新しい業務プロセスに基づいたソフトのカスタマイズ、システムインテグレーション、またシステム運用管理を含めたトータルサポートで日本IBMの総合力を生かそうというのが今回の提携の趣旨だ。
実際には、昨年に受注したプロジェクトにおいて、顧客側から日本IBMをパートナーにすることを指定されたことが、今回の正式提携のきっかけになった。この共同プロジェクトを通して、CS側から日本IBMへの技術移転が進み、さらなる協業体制を組織することの合意に至ったという。契約としては、日本IBMがCS社の「オーソライズドインテグレーター」に指定されたということになるが、このパートナープログラムは今回の提携のために設けられたもののようだ。
CS社は、国内では富士通およびヒューリンクスを販売代理店として事業を展開してきているが、この関係には今後も変化はない。両代理店もそれぞれに、E-Notebookを含めたCS製品の販売をこれまで通り継続していくことになる。