ワールドフュージョンが新生トライポス製品の国内販売権を取得
バイオとケミカル領域の融合狙う、ファーマコゲノミクス分野で新展開へ
2007.04.17−ワールドフュージョン(本社・東京都中央区、川原弘三代表取締役)は、米国の大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーであるトライポス製品の国内販売権を取得し、4月から販売・サポート業務を開始した。トライポスは、この4月から「トライポスディスカバリーインフォマティクス」として新体制に移行しており、国内市場においてもそれまでの代理店だった住商情報システムが取り扱いを終了して、ワールドフュージョンに窓口が一本化されることになった。トライポス製品を加えたことで、バイオインフォマティクスを中心とした既存事業とのシナジーを狙っていく。
ワールドフュージョンは、1996年2月の設立。バイオインフォマティクス分野のシステム開発と受託サービスを主なビジネスとしている。文献情報をもとに遺伝子/たん白質/疾患/化合物の関係性を網羅した独自データベースシステム「LSKB」など、最近はファーマコゲノミクス関連分野に事業を集中させてきている。
具体的に取り扱うのは、新生トライポスの創薬支援統合システム「SYBYL」、Windows版の実験化学者向けシステム製品群「Benchware」(ベンチウエア)など。とくに、標的たん白質と医薬候補化合物とのドッキングシミュレーションを行う「Surflex-Dock」をストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)のツールとして、またリガンドベースドラッグデザイン(LBDD)分野では受容体の三次元情報をもとに化合物構造を創出する「EAインベンター」、分子アラインメントとバーチャルスクリーニングを行う「Surflex-Sim」(いずれもSYBYLを構成する機能モジュールの1つ)などを戦略商品として位置づけて拡販していく。また、アカデミック向けの販売も伸ばす方針だ。
今回の代理店変更は、トライポス側からワールドフュージョンに打診があったもの。ワールドフュージョンとしても、今後のファーマコゲノミクスの進展によって遺伝子と化合物との関係がますます重要になるなか、「バイオ系とケミカル系の両方の技術・製品を融合させ、いわば“ケミカルゲノミクス”とも言うべき新領域を切り開きたい」(川原代表取締役)という狙いがある。
網羅的ゲノム解析とトライポスの化合物設計技術を統合することで、遺伝子発現変化の予測や分子間ネットワークからの化合物デザイン、新しい化合物とたん白質とのシミュレーション、復活薬の予測、適応症拡大の予測、テーラーメード医療への遺伝子型予測、ゲノム治験などのアソシエーションスタディ−など、さまざまな新展開の可能性があるという。
今回、住商情報システムのトライポス担当者のうち3名がワールドフュージョンに異動してきており、ゼロから始めるよりも有利な状態でトライポス事業をスタートできた。今後はトライポス側に働きかけて、単純にパッケージソフトとしての販売にとどまらず、トライポスの技術を基盤にしてのサービス事業などへとビジネスを発展させたい考え。
自社製品にトライポス製品を組み込むことなども検討中。例えば、三菱スペース・ソフトウエアと共同で製品化したイントラネット型の創薬研究ポータルサイト「BioElephant」(バイオエレファント)は、社内データと公共データを連携させ、各種の解析ツールに一元的にアクセスできる統合ポータルを実現するものだが、ここにトライポスのツール群を組み込んで利用できるようにさせる案も出てきているという。
なお、ワールドフュージョンにとってのトライポス事業の規模感であるが、全社売り上げがおおむね2倍に拡大することになるようだ。