マイクロソフトが国内ERP市場に6月正式参入
中堅から大企業まで対応可能なAXを発売、親しみやすさ・先進性武器に
2007.04.20−マイクロソフトは、日本においてERP(エンタープライズリソースプランニング)市場に参入するスケジュールを固めた。6月に「Microsoft Dynamics AX」(マイクロソフトダイナミクスAX)の名称で正式な日本語版を発売する。基幹業務パッケージとしては、昨年9月に投入したCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)製品に続くもの。ERPとして最後発となるが、マイクロソフト製品としての親しみやすさやオフィスなどの他製品との親和性、アーキテクチャーの先進性などを武器に中堅から大企業向けの市場に食い込みたいとしている。
マイクロソフトは、「Microsoft Dynamics」の製品名で基幹パッケージ事業を推進しており、欧米ではERPで「Dynamics AX」、「Dynamics GP」、「Dynamics NAV」、「Dynamics SL」の4製品と、CRMとしての「Dynamics CRM」を販売している。
ERPのうちGPとSLは米グレートプレーンズ、AXとNAVはデンマークのナビジョンから買収した製品。NAV(ナビジョン社のNavision)とSL(グレートプレーンズに買収されたソロモン社のSolomon)は小規模から中小企業向け、AX(ナビジョンに買収されたダムガードデータ社のAxapta)とGP(グレートプレーンズ社のGreat Plains)は中堅企業向けだが、AXは大企業にも適応できる拡張性を持っている。
将来的には製品ラインを統合・集約していく予定であり、マイクロソフト日本法人ではそれを見越し、アーキテクチャーの先進性を考えて、日本市場ではAXに絞って販売を行うことにした。
AXは、Axapta時代から9年間の歴史があり、130以上の国や地域で7,500社への導入実績を持っている。会計、サプライチェーン管理、在庫管理、生産管理、顧客管理、人事管理、プロジェクト管理など総合的なERP機能を備え、50−500ユーザー程度の基幹システムに採用されるケースが多かった。ただ、最近では3,000ユーザー以上の実績も出てきており、マイクロソフトではSAPやオラクルに匹敵するERP製品に育てたい考えだ。
今回のAX日本語版は、メニューなど画面が日本語化されていることに加え、和暦対応、カタカナ表記、日本様式の財務諸表、T字型仕訳入力画面、全銀協フォーマット対応、消費税レポート、手形管理機能の拡張、月次請求書対応など、日本企業の必要に合わせた機能追加が行われている。
ユーザーインターフェースは、オフィスシリーズのアウトルック風の構成を採用しており、メニューの階層をたどらずに必要な機能が呼び出せるなど、オフィスソフトに慣れている人には親しみやすい。エクセルを使ってデータ分析したり、ワードで文書を作成したり、アウトルックやインフォパスを使ってデータ入出力を行ったりと、普段使っているオフィスソフトと連携させて作業できるのも強み。
また、システム内のコードおよびオブジェクトが階層化されており、カスタマイズ部分がバージョンアップの影響を受けにくい。具体的には、システムの標準機能が4階層で構成され、その上にサードパーティーのアドオンやユーザーカスタマイズで使用できる領域が4階層設定されている。このため、標準機能がバージョンアップしても、カスタマイズした階層はそのまま引き継ぐことが可能。他のERP製品と比べて長く使えることが特徴になるという。
こうしてカスタマイズされたオブジェクトは、ファイルにエクスポートできるので、他の拠点のシステムにそれを移植することなども簡単に行える。
ライセンスについては、会計とサプライチェーンの基本機能、業務分析・レポーティングツールを含む「ビジネスエッセンシャルエディション」、基本機能一式をフル装備した「アドバンスドマネジメントエディション」の2種類が用意される。
*[追記] マイクロソフト日本法人は、ERPパッケージとしてAXのみを正式に扱う計画だが、NAVに関してはナビジョン時代からパシフィックビジネスコンサルティング(PBC)が日本語化を含めた販売・サポートを行ってきている。このルートでのNAVの取り扱いは継続される。