シミックスがElsevierMDLを現金1億2,300万ドルで買収

包括的ソリューション拡充へ、売り上げ1億ドルの上積み期待

 2007.08.14−米シミックスが10日、ケムインフォマティクス最大手の米MDLインフォメーションシステムズ(ElsevierMDL)を買収すると発表した。買収額は現金で1億2,300万ドル。すべての手続きは今年の10−12月期までに完了させる。シミックスでは、2008年に旧MDL関連の事業で売り上げを1億ドル上積みできると見込んでおり、新体制後のシミックスの収入は一気に2倍近くに跳ね上がることになる。

 MDLは1997年3月から学術出版とデータベース(DB)サービス大手のエルゼビアグループの一員となっていたが、この話をまとめたのが当時のMDLの社長だったスティーブン・ゴールドビー氏。同氏は売却を機にMDLを去ったあと、シミックスのCEOを務めてきていた(現在は会長)。

 シミックスは1995年設立で、当初はコンビナトリアル材料科学/ハイスループット実験分野のテクノロジーベンダーとして、受託研究を中心としたビジネスを展開。現在では、ソフトウエア製品にも事業を広げており、化学・材料・製薬会社の研究開発を支援する電子実験ノートブックや意思決定支援システムなどを提供している。

 とくにここ数年は買収も活発に行っており、電子実験ノートでは2004年11月にインテリケム、2005年3月にシンセマティクスを買収。2003年には自社技術を使って実際に新薬開発を行うイリプサ(Ilypsa、2007年7月にアムジェンへ売却)を設立したり、2006年11月にセンサー技術の専門企業であるヴィジックス(Visyx)を設立したりもしている。

 昨年1−12月期の同社の売り上げは1億2,490万ドル(前年比15.5%増)で、内訳は受託研究が5,793万3,000ドル(同1.7%増)、製品販売(ソフト・ハード)が3,352万6,000ドル(同25.7%増)などとなっている。

 一方のMDLは、研究情報管理のインフラとしてのDBシステム「Isentris」をはじめとして、電子実験ノートなどのワークフローアプリケーション製品群、試薬DBなどの豊富なコンテンツ製品群を持ち、顧客企業は1,000社、約5万人のユーザーを抱える。販売やマーケティングの拠点も全世界に展開している。

 この両社が合体することによって、ラボラトリーオートメーションの機器・システムから研究支援ソフトウエアまで幅広く強力なソリューション展開が可能になると期待される。

 ただ、これまでElsevierMDL製品として提供されてきたコンテンツ製品の中で、CrossFire Beilstein、CrossFire Gmelin、Patent Chemistry Database(PDC)といったバイルシュタイン系DB、および統合サービスのDiscoveryGate、電子薬理学辞典xPharm、新薬承認申請書の全文検索が可能なPharmaPendiumといったコンテンツについては、今回の買収ではシミックスには移管されないようだ。このため、シミックスはMDLの買収完了後もエルゼビアとのパートナーシップを維持し、エルゼビア製品とMDL製品との継続的な連携を図っていく。

 なお、MDLは独自の日本法人を擁しているが、シミックスには小規模な支店(日本事務所)があるだけで、代理店をCTCラボラトリーシステムズが務めている。将来の日本の事業体制がどうなるかは、現在のところはまだ未定。