AJS:藤田純司社長インタビュー

SAP導入ノウハウ武器に拡大、3Kイメージ払拭「夢のある会社に」

 2007.11.15−AJSは、1987年に旭化成情報システムとして設立された情報サービス事業会社だが、大手システムインテグレーターのTISが株式の51%を取得したことにより、2005年4月からTISグループの1社として活動。昨年4月に社名をAJSと変え、プロセス系製造業を得意領域とする企業としてグループ内でも重要な位置を占めている。今年4月に就任した藤田純司社長は、「ソフトウエア開発は請負業であり、基本的に利益を出しやすいビジネスとはいえない。その中でいかに収益性を確保するか、グローバル展開・オフショア開発への対応をどうするかなど、課題は多い。また、ソフト産業の“3K”(きつい・厳しい・帰れない)イメージを払拭し、明るく夢のある会社にしたい」と話す。

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 AJSの売上規模は、2006年度で104億6000万円。藤田社長は、「2005年度の赤字決算に対し、2006年度は下半期に大きく改善して営業利益・経常利益の段階では黒字に戻すことができた。ただ、営業利益率は2%台で、業界平均よりやや低い。2007年度は売り上げ116億円、純利益4億円を見込んでおり、これで“普通の会社”に戻せると考えている」と近況を説明する。

 藤田社長自身は、旭化成の住宅事業での経歴がメインで、情報システム担当も長く務めた。「外注や請負が多いという点で、ソフト開発は住宅・建築に業態が似ている。基本的に利益が出にくい産業だと思うが、やはり開発コストを削減することがポイントになる」と指摘。同社は2003年、旭化成グループの情報システムを、SAP社のERP(エンタープライズリソースプランニング)パッケージをベースとしたオープンシステムに移行するプロジェクトを成功させたが、とくにその経験が大きな財産になっているという。

 「旭化成は多角化しているため、ERPの業務フローを13種類も構築することになった。そうした中で、短期間でERP導入を実現するFastBreak、現場の発想から生まれた構築ツールWebGearなどの技術を確立することができた。また、たくさんのアプリケーションを手がけたので、以前の経験が新しいプロジェクトに生かされるというケースも多くなってきた」と藤田社長。

 現在は旭化成の仕事が売り上げ全体の85%を占めるが、ERP事業およびパッケージを主体にした医療関連事業(医用画像処理など)を伸ばし、外部比率を30%くらいにまで拡大させたいとしている。

 それとともに、藤田社長が力を入れているのが“明るく夢のある会社づくり”だ。「携帯電話やICカードがいまや国民生活の基盤になっているが、それらを実現しているのはソフトの力が大きい。つまり、ソフト開発には豊かな社会を築くという“物づくり”の醍醐味がある。本来は夢のある産業のはず」と説く。

 「社長に就任したとき、社員みんなと話しをするという目標を立てた。すると、良い意味でイメージが裏切られ、メールだけでなく顔と顔とのコミュニケーションも活発だし、社内が明るいということがわかってきた。もちろん、3K的な面も残っているが、残業時間が昨年よりも削減されるという成果も出てきている。もっと仕事の上でのコミュニケーションが密になれば、さらに改善できると考えている」。現在の社員数は320人だが、来春には25人の新卒採用が決まっている。「人を大切にし、3Kといわせない会社にする」と目標を語る。

 また、オフショア開発に関しては、「まだまだ発注量が小さく、コストダウンに寄与するところまでいっていないが、とくに中国を拡大したいと考えている。ただ、そのためには優れたプロジェクトリーダーの育成がポイントになるし、仕事の仕方も変えていく必要がある。(社長在任中に)海外にブランチをつくるところまでやれればと思う。さらに、旭化成のグローバルビジネス展開をフォローアップする体制づくりも考えていかなければならない」とした。