富士通が製薬業向けシステム構想「tsPharma」を発表
クラウド/SaaS対応前面に、開発系から基幹・営業系までサービス拡大
2010.08.05−富士通は4日、記者説明会を開催し、製薬業向けのソリューションコンセプトである「tsPharma」を発表、幅広い業務アプリケーションを積極的にクラウド/SaaSに対応させていく方針を明らかにした。今年1月に開始した臨床開発向けの「tsClinical」に続き、新薬申請文書管理システムを9月から、MR(医薬情報担当者)向けの営業支援システムを8月からSaaSにて提供開始する。いち早くクラウド志向を前面に押し出すことで、製薬業向け事業のさらなる拡大を図る。
富士通は、創薬研究から非臨床、臨床、承認申請・製造、市販後調査、さらに営業・販売・会計などの業務系まで数十種類のアプリケーションを幅広く揃えている。今回、このすべてを統一するコンセプトとして「tsPharma」を打ち出した。各アプリケーションを順次SaaSにて提供できるようにするほか、システム運用支援やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)も合わせて実施していく。
富士通グループの中核には、製薬業に特化した約50人の営業と約300人のシステムエンジニア(SE)がおり、北米・欧州を含めたグローバルサポート体制も強化中。とくに、300人のSE部隊は「ITベンダーの中では質・量ともに一番」(ライフサイエンス統括営業部の大羽武利統括部長)だという。
ソリューション別では、開発系の臨床支援分野でトップシェア。GCP支援システム「DDworks21」は70社の導入実績があり、外資系製薬会社も国内での臨床試験実施のために利用しているケースがあるという。また、市販後調査のための副作用情報管理システム「パーシヴAce/PV」も75社の実績がある。
これら開発系のソリューションは、すでに「tsClinical」としてSaaS化を先行させており、さらにSaaSに対応したサービスメニューの拡充を図っていく。臨床開発の実施期間中だけ必要に応じて利用できるため、コスト・運用面の柔軟性からSaaSに適しているとして、すでに評価が高い。
また、これに続き、9月からは新薬申請文書管理サービス「tsDocument」とセキュアコラボレーションサービス「tsCollaboration」をスタートさせる。ともにEMC社との提携のもとに初めて富士通がSaaSで提供するサービスで、前者はDocumentumの機能をSaaSで利用できるようにしており、富士通側でバリデーション済みの環境が用意される。後者はウェブベースの共同ワークスペースであるeRoomをSaaSに対応させたものとなっている。
一方、基幹・営業系ソリューションでは、セールスフォース・ドットコムが提供しているオンデマンド型CRMサービスをベースに、富士通の業種特化したノウハウを反映させてMR支援業務のテンプレートを開発した。8月から提供開始する。また、製薬業向けコールセンターシステムをSaaS形式の「CRMateくすり相談室」として製品化する予定。医療用医薬品と大衆薬の両方の問い合わせに対応でき、薬品特有の有害事象管理などの主要機能を網羅した。こちらはオンプレミス型パッケージ版も用意するという。
富士通では、こうしたSaaS対応ソリューションのほか、最新のパッケージソフトも含めてトータルな取り組みを紹介する「富士通ライフサイエンスフォーラム2010 in 東京」(http://fjid.jp.fujitsu.com/events/seminar/2010/08/10002779.html)を8月9日に東京・蒲田の富士通ソリューションスクエアにて開催する。定員100人で聴講無料となっている。