ウルフラムリサーチが「Mathematica」の最新バージョン8

自然語で入力が可能、技術系から金融・教育分野まで用途広範

 2011.02.18−ウルフラムリサーチは、代表的な数学ソフトの最新版「Mathematica 8」(マセマティカ)の日本語版をリリースした。簡単に複雑な方程式を計算してその結果を可視化するだけでなく、多様なデータの取り込みや情報へのアクセス、プログラム開発を行うための統合的なプラットホームとして利用できる。数学、物理、化学、生命科学、経済・金融、機械・電気工学などさまざまな産業分野に応用できるほか、美術・音楽などの芸術分野や子供向けの学習教材まで用途が広い。今回の最新版では、コマンドを知らなくても自然語で命令を入力できる新機能が搭載され、使いやすさが格段に向上した。

 米ウルフラム社は1987年に設立された非公開企業で、600名ほどの社員がいる。主力製品の「Mathematica」は、数式を入力すると答えが出る数学ソフトというイメージがあるが、2000年代に入って大きく機能強化されており、ドキュメント作成ツール、コンピューティング環境、巨大な知識ベースなどの機能を兼ね備えた総合的なスーパーツールへと発展してきているという。とくに教育用途に力を入れており、学校や教員をサポートするため、7,000種類以上のデモを公開しており、教材づくりの支援などにも取り組んでいるということだ。

 Mathematicaは“ノートブック”と呼ばれるユニークなユーザーインターフェースを持っており、白紙に書き込んでいくようにして各種の計算などを行うと、それがそのまま文書になっていくという特徴がある。ノートブックには、文章、画像、グラフ、数式、プログラムなどを混在させて記述でき、インラタクティブに情報を操作・表示するコンポーネントを埋め込むことも可能。

 とくに、今回の最新版で搭載された新機能“フリーフォームインプット”は、Mathematicaのコマンドや構文を知らなくても平易な英語でやりたいことを入力できる機能。例えば、sinカーブを描かせたい場合、「plot sinx」、「graph of sin(x)」、「visualize the sin of x」とどのように記述しても、Mathematicaが意味を解釈して正しい答えを返してくれる。「plot sinx with red dashing and yellow filling and gray gridlines」といった具合に、グラフの属性を自然語で指定することも可能である。これは、「Wolfram|Alpha」の画期的な言語処理技術を統合することによって実現された。

 同社では、Mathematicaから利用できる10兆件のデータを公開しており、それらも自然語で取り出すことが可能。化学、生物、物理、天文、気象、地理、金融など幅広い分野を網羅している。例えば、「melting point of caffeine」、「caffeine molecule」などと入力することで、物性データや分子構造を呼び出すことが可能。遺伝子配列やたんぱく質の構造データも収録されている。また、株価などの最新情報も登録されているため、金融データの分析も容易。おもしろいところでは、「toast + orange juice」として摂取カロリーを知ることもできる。ビッグマックとフライドポテトといった特定の食品のカロリーも登録されているという。ただ、フリーフォームインプットは、同社のサーバー側で解釈を行うため、使用時にインターネットに接続されていることが必要になる。

 また、Mathematicaをプログラミングツールとして利用するには、関数には大文字を使う、関数の引数を[]で囲う、リストと範囲を{}で示すなどの簡単なルールを覚えるだけ。独特のシンボリックプログラミングにより、開発の生産性が格段に高いという。高性能Cコードの作成、SymbolicCのサポート、拡張された並列処理のサポートといった特徴もある。クラスターコンピューティングとして、WindowsCCSやWindowsHPC、LSF、PBS、SGEなど各種の環境に対応。CUDAとOpenCLの両方をサポートし、GPGPU向けプログラミング環境としても強力な機能を備えている。


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