カスペルスキーが法人向けビジネスを強化
社屋移転など対日投資を積極化、法人向けパートナー拡大へ
2011.04.15−ロシアに本社を置くセキュリティベンダーのカスペルスキーは、日本で法人向けビジネスを強化する。日本法人を3月で100%子会社化し、社屋移転、スタッフ増員と対日戦略を強化することに合わせて取り組んでいくもの。今回、法人向けの新製品として、マッキントッシュ向けのセキュリティソフトと、プロバイダー向けサービスプラットホーム製品を新発売する。
本社のユージン・カスペルスキーCEO(Eugene Kaspersky)は、「10数年前はティーンエイジャーの悪ふざけが中心だったが、いまやネットワークの脅威はサイバー犯罪へとシフトしている。情報を盗み出すサイバースパイ、企業の活動を妨害するサイバーサボタージュなどが広がり、攻撃の対象も個人から大企業や国家機関へと変化してきた。さらに強固なセキュリティが求められている。また、攻撃にさらされるデバイスも、パソコンからスマートフォンやスレート端末に移行することが考えられ、早急な対応が求められる」と、法人向け需要が拡大する背景を説明した。
同社は2004年に個人向けウイルス対策ソフトで日本市場に進出し、順調に成長してきているが、2006年から法人向けビジネスにも乗り出していた。法人向けのパートナー数は当初の2007年は2社だったのが、2010年には110社にまで拡大してきているという。今年末には250社に増やし、法人市場でシェア5%を狙いたいとしている。
そのために日本法人の体制を強化し、完全子会社化したのに続き、社屋を移転し大幅なスタッフ増員を図る。国内の社員数は現在40名だが、今年末に70名、3年後には140名まで拡大していく。販売方針は、100%チャネル販売であることは変えないが、パートナー支援体制を大きく拡充する予定だ。
さて、今回の法人向け新製品だが、まず「Kaspersky Endpoint Security 8 for Mac」は、デザイン業界や研究機関などマッキントッシュを主力に利用する法人需要をターゲットとしたもの。マック版は昨年に個人ユーザー向けを発売しているが、今回の法人向けは管理者向け機能などが強化されている。初年度に3万ライセンスの販売を見込んでいる。
2つ目の「Kaspersky Security Center Service Provider Edition」は、ネットワークサービスプロバイダーが自社の顧客向けにセキュリティサービスを提供する際に利用できるプラットホーム製品。プロバイダーには独自性のあるサービスを低コストで実装できるメリットがある。現時点で、北海道総合通信網、ユーザサイド、CTCシステムサービスに導入が決定しており、6月〜7月に実際のサービスが開始されるという。カスペルスキーとしては、同製品の販売で初年度1億円の売り上げを見込んでいる。
カスペルスキーCEOは、「日本にしっかりと根付くことにより、日本におけるセキュリティ対策に特化した製品づくりを行って日本の顧客をネットワークの脅威から守っていきたい。日本の大学などとも連携し、セキュリティ技術の底上げを図りたい」とした。