米シミュレーションズプラスが主要製品をバージョンアップ

「GastroPlus」「ADMET Predictor」など、多数の新機能搭載

 2011.12.14−米シミュレーションズプラスは、年末にかけ主要製品を相次ぎバージョンアップする。薬物の吸収を予測する「GastroPlus」、溶出試験シミュレーションソフト「DDDPlus」、ADME(吸収・分布・代謝・排出)予測を行う「ADMET Predictor」、化合物スクリーニングのための統合プラットホームソフト「MedChem Studio」などで、国内では代理店のノーザンサイエンスコンサルティングを通して販売される。同社の事業は本国では非常に好調で、2011年度(2011年8月期)はこの事業で前年比15%増、2012年度第1四半期も創業以来の記録的な業績になっているという。

 同社の代名詞的な製品である「GastroPlus」は今回でバージョン8.0となる。独自に機能強化したACATモデルに基づき、経口投与製剤の消化管内での挙動や薬物の血中移行を解析・予測することが基本的な機能。ヒトの絶食時と摂食時に加え、ビーグル犬、ラット、マウス、ウサギ、ネコの生理学的モデルを搭載しているが、最新版ではアカゲザルとカニクイザルのモデルが追加された。

 とくに、溶解・吸収モジュールでは、薬物が吸収される際に細胞膜を通過するケースと細胞間を通るケースを分けて考慮できるようになったという。また、DDI(薬物間相互作用)モジュールが機能強化され、トランスポーター阻害に関係した予測が可能になった。これにより、酵素阻害を含めてすべての薬物間相互作用に対応できるとしている。腸肝循環にともなう複雑な相互作用も予測が可能。

 PDPlus(ファーマコダイナミクス)モジュールも強化されて使い勝手が良くなった。薬効と血中濃度の関係から最適投与量や投与間隔を最適化する機能を持つが、複数のPDモデルを一度に検証したり、複数のデータセットを比較対照させたりするなど、操作性が向上している。

 そのほか、患者の性別や年齢、薬剤の投与量や間隔、投与のタイミングなどを入力して、バーチャルに臨床試験を行う機能なども搭載されているという。

 次に、「DDDPlus 4.0」では、パラメーターの感度解析を実行し、完全な溶解プロファイルを取得する機能を追加したほか、大口顧客である米食品医薬品局(FDA)の要望により、仮想試験を実行する機能を組み込んだ。製剤や実験のばらつきの影響を評価できるようになった。

 一方、「ADMET Predictor」(ADMETプレディクター)の最新バージョン6.0では、新たに22種類のモデルが追加され、対応できる物性が大きく広がる。毒性予測も大幅に強化されるという。また、“ADMETリスクフィルター”と呼ばれる新機能は、リピンスキールールのような定式に基づいて化合物をふるい分けることが可能。低吸収のリスク、変異原性のリスク、全体的な毒性のリスク、代謝のリスクといったいろいろな観点で、化合物ライブラリーから医薬として望ましい物性を有した化合物を抽出できる。ワールドドラッグインデックス(WDI)の最新版に基づいて開発・評価しており、インシリコ創薬の強力なツールとして注目されるということだ。

 「MedChem Studio」はメディシナルケミスト向けの直感的なケムインフォマティクスプラットホームで、データマイニングとドラッグデザインのための高度な機能を提供する。ケミカルスクリーニングデータの可視化、体系化、検索、解析を簡単に行うことができ、化合物ライブラリーの可視化や閲覧、クラスタリング、クエリー検索、ディスクリプター生成、さらにQSARモデル作成、構造類似性解析が可能。

 次期バージョンでは、大量のライブラリーを高速にクラス分けする“フレームワーククラス”が導入される。これまで苦手だった環構造にも対応でき、ノートパソコンでWDIの75%をわずか45秒間でクラス分けしたという。また、新機能の“モレキュラースコア”は、複数の条件を満たしてスコア付けすることができ、大量ライブラリーのスクリーニングに威力を発揮する。マーカッシュ構造に対応できる“MCS”(マキシマムコモンサブストラクチャー)、方程式ベースで分子の属性を計算する“モレキュラーアトリビュート”といった新機能も注目されているようだ。

 なお、同社は今年の春のACS(アメリカ化学会)で無料の構造式描画ソフト「MedChem Designer」をリリースしている。現行の「MedChem Studio 2.0」およぶ次期「ADMET Predictor 6.0」に統合されるが、単体の描画ソフトとして無償でダウンロードして使用することもできる。すでに1,500本以上がダウンロードされたという。構造式の描画に加えて、logPやlogDなどいくつかの物性予測が可能。ADMETプレディクターを持っていれば、ボタン1つで130種類の物性予測が行える。また、ADMETプレディクターで予測した結果をわかりやすく表示する機能もあり、例えば代謝のルートと代謝産物の構造を表示して、その物性や毒性をさらに予測するといった作業も簡単に行える。

 同社のウォルター・ウォルトス会長兼CEOは、「構造式描画ソフトはたくさんあって無料のものも多い。しかし、特徴があれば使ってもらえると思う。物性予測機能もついているし、ADMETプレディクターとの連携が可能。ADMETプレディクターのプロモーションにもつながると考えた。いまのところ評判はいい」と笑う。以下のURLからダウンロード(http://www.simulations-plus.com/Products.aspx?grpID=1&cID=20&pID=25)ができる。


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