TSテクノロジーがQM/MC法の独自パッケージソフトを製品化
溶媒効果を考慮した反応解析が可能、PCクラスターとのセット販売も
2011.12.15−Transition State Technology(TSテクノロジー)は、量子化学を用いてモンテカルロシミュレーションを行う技術計算プログラムを独自に製品化し、「PowerMC」の名称で販売開始した。溶媒効果を考慮した化学反応解析が行えることが特徴で、PCクラスターを利用した高並列環境で精度の高い計算を実行できる。ソフト価格は、企業向けの永久サイトライセンスが790万円、年間サイトライセンスは210万円、学術・教育機関向けは同様に290万円、90万円となる。
同社は、山口大学発のベンチャー企業として2009年に設立され、計算化学を用いた分子設計、合成ルートの提案、合成プロセスの最適化などの受託研究サービスを提供。これまでに40件以上のプロジェクトをこなしてきたが、事業の幅を広げるためパッケージソフト開発にも乗り出すことにした。
今回の「PowerMC」は、同社の山口徹社長が山口大学時代から作成してきたソフトウエアで、現在のバージョンは3.0。QM/MC法(量子力学/モンテカルロ法)、それに自由エネルギー摂動法(FEP)を加えたQM/MC/FEP法が実装されており、物質の溶媒和エネルギー、反応における溶媒和自由エネルギー、分子結晶構造などを精度良く計算することができる。
QM/MC法は、クラスター構造の安定化に量子力学を用いるため、分子力場法などに比べて非常に高精度にエネルギーを求めることが可能。溶媒効果を取り入れる場合、溶質分子と溶媒分子のクラスターの相互作用をあらわす溶媒和エネルギーを計算することにより、物質の溶媒中における安定化やエネルギー変化を詳細に把握することができるという。
また、QM/MC/FEP法では、化学反応の反応座標に沿ってQM/MC法を行うことにより、反応における溶媒和自由エネルギー変化を求めることが可能。溶媒中での化学反応メカニズムの理解に役立つ。さらに、温度と圧力の効果を取り入れれば、超臨界反応のシミュレーションも可能となる。
QM/MC法およびQM/MC/FEP法が行える市販パッケージソフトは、いまのところほかには存在しないということだ。
ただ、計算量が大きくなるため、ハードウエアとして数十から数百台規模の並列処理環境が必要。そこで同社では、PCクラスターの販売も合わせて行うことにした。お得なトータルパッケージも用意しており、144コアのPCクラスターに、計算化学に必要なソフトのセットアップ、教育・研修も付けて980万円からで提供していく。