米アスペンテック:エノン北アジア担当副社長インタビュー
プロセス産業のニーズに応えて30周年、震災復興で技術貢献期待
2011.10.08−プロセス産業専門ITベンダーの米アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、8月に設立30周年を迎えた。化学工学のシミュレーションソフト開発からスタートし、高度制御、運転最適化、生産計画、生産管理、サプライチェーンマネジメントまで、プロセス型産業の全体最適経営のためのエンタープライズソリューションを包括的に提供するまでに成長してきた。同社の北アジア地区担当に就任したジャン・フランソワ・エノン(Jean-Francois Henon)副社長に最近の製品戦略や今後の対日戦略などについて聞いた。
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− 30周年は感慨深いですね。
「たくさんのIT企業が生まれるが、10年続くのはそのうちの5分の1だといわれる。ましてや、30年を迎えられる企業は少ない。同業のソフトベンダーにもかなり古いところはあるが、いまも成長しているのはアスペンテックだけだ」
− その秘訣はなんでしょう。
「やはり、当社の技術が顧客の業績向上にしっかり貢献できていることだと思う。30年前はメインフレームのソフトだったが、それがパソコンで動くようになり、また個別のポイントソリューションだったシステムが、統合ソリューションへと発展した。さらに、現在はクラウドやモバイルへの対応を進めている。ソフトの提供形態に関しても、どのソフトでもトークンの範囲内で自由に利用できるライセンスを新たに導入したことが成功につながった。これらはすべて、顧客ニーズに合致したソリューションを実現するために行ってきたことだ。ニーズは時代に合わせて変わる。開発テーマはまだまだ山ほどある」
− 最近力を入れているソリューションについて教えてください。
「全社的に推進しているのは、クラウドコンピューティングやモバイルコンピューティングを活用することだ。例えば、スマートフォンでクラウドにアクセスし、プラントの運転データをリアルタイムに取得することができる。また、高度制御の分野では、アダプティブモデリング(適応的モデル化)と呼ばれる技術が注目されている。生産現場では原料が変わることも多いが、従来のモデルでは実態に合わなくなってしまう。新技術は、自動的にモデルを再調整できるメリットがある」
− とくに日本市場で注目したいソリューションはありますか。日本では、東日本大震災の影響でサプライチェーンが寸断される事態が生じたため、あらためてその大切さに注目が集まりました。
「東日本大震災の被害には、心よりお見舞い申し上げたい。それとともに、震災からの復興で当社の技術をぜひ役立ててほしいと思っている。アスペンテックのサプライチェーンソリューションには、石油製品系と化学製品系にそれぞれ専門特化したソフトウエアが用意されており、実績も豊富。欧米の先進的なベストプラクティスを提供できるし、日本においても専門的なサポート体制を整えている。また、夏場にかけて工場の節電が注目されたが、当社のトータルエネルギーマネジメントが有効だと考えている。さらに、これは復興とは別だが、日本の化学産業ではスペシャリティケミカルが成長しているので、これを対象にしたシミュレーションソフトを強化していく方針だ。専門スタッフもさらに増員している」
− ところで、北アジア担当とはあまり聞かない区分けですが。
「各地域で、それぞれの市場をきめ細かくマネジメントするため、以前よりも細分化された体制に変えた。北米と中南米、ヨーロッパ・ロシアと中東・北アフリカ、北アジアと南アジアという具合だ。北アジアには、日本、中国、韓国、台湾、香港などが入る。北アジア地区は、日本のように成熟した市場もあれば、中国のような成長の速い市場も含まれているので、わたしとしてもやりがいがあり、興味深い市場だと期待している。これまでは、日韓中などでバラバラに事業展開していたかもしれないが、これからはそれぞれの市場で得た実績や経験を相互に生かし合い、有機的なビジネスを推進していきたいと考えている」