アクセルリスが「Materials Studio」の最新版6.1をリリース
Pipeline Pilotとの統合強化、外部解析ツールの組み込みも容易に
2012.11.27−アクセルリスは、材料科学向け統合モデリングシステム「Materials Studio」(マテリアルスタジオ)の最新バージョン6.1を開発、提供開始したと発表した。同社の各種ソリューションに共通の基盤製品である「Pipeline Pilot」(パイプラインパイロット)との統合・連携が強化されており、一連の材料研究プロセスを大幅に効率化できる。シミュレーション機能の面でもさらなるブラッシュアップが図られている。
今回の最新版6.1は、「Accelrys Enterprise Platform」(AEP、旧Pipeline Pilot エンタープライズサーバー)およびクライアント製品の「Accelrys Pipeline Pilot」、さらにパイプラインパイロットのコンポーネントとしてマテリアルスタジオの機能を呼び出すための「Accelrys Materials Studio Collection」との統合が最大の特徴。
これまでも、パイプラインパイロットのプロトコルにマテリアルスタジオの機能を組み込むことはできたが、今回はマテリアルスタジオの中からパイプラインパイロットを呼び出すことができるようになった。これにより、マテリアルスタジオで材料設計を行いながら、必要に応じてパイプラインパイロットのプロトコルを使用して解析手順を自動化して実施し、その結果をマテリアルスタジオに戻して設計を続けることが可能。研究者の思考を中断させることなく、スムーズな流れで研究を進めることができる。
パイプラインパイロットのプロトコルは、計算化学のベストプラクティスをカプセル化して埋め込み、自動化・再利用することができるため、多くの研究者が先端の解析技術を活用して自分の研究を効率化させることが可能。AEPの機能を使えば、ウェブブラウザーや電子実験ノート(ELN)からプロトコルにアクセスしたり、解析結果をエクセルに読み込ませたりすることなども容易に行える。
さらに、サードパーティー製のコンポーネントを利用したり、ユーザープログラムをコンポーネント化したりすることもできるため、マテリアルスタジオで設計したモデルを外部の計算エンジンで解析することも可能だ。大学などでつくられた最先端の解析手法を取り入れることは、製品化スピードの加速や競争力の強化といった面でも大きな意味がある。
先行ユーザーのジョンソンマッセイ社では、材料の吸着エネルギーや偏析エネルギーの解析とグラフ作成にまる1日かかっていたのが、パイプラインパイロットの活用により、それらの作業が数秒で完了するようになったと報告している。
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以下、今回のバージョンアップでの機能強化をもう少し細かくみていくと、まずGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)が新しいプログラミング言語“C#”で書き換えられた(これまではVisualBasic)。機能面は大きな変更はないが、細かなところで改善が図られており、例えばグラフィックスの速度・品質が向上している。これまでは、研究発表などで使う高品位な画像がほしいときは、画質を落とした状態で構図を決めてから描画し直すなどの手間がかかったが、最高の描画品質の状態のままで分子モデルを自在に扱うことができる。とくに、ボール&スティック図の表示が美しくなったということだ。
また、プロジェクトファイルへのアクセス方法も改善された。フォルダーツリーをたどるのではなく、プロジェクトエクスプローラーからダイレクトにファイルを指定できる。細かなことだが、ストレスなく操作できることで、全体の作業性への貢献は大きいという。
さて、次に計算面での進歩だが、古典力学分野では分子力学プログラム「Forcite」の機能強化として、チャージグループの設定が自動化された。これは、全体の電荷がゼロになるように分子構造を切り分けるもの。ブロック単位でうまく切り分けると計算精度が良くなるが、自動で行えるようになったため、作業性は大幅に向上した。また、「Forcite」と粗視化版の「Mesocite」には、物性の時間変化を解析する機能も追加された。
一方、量子力学関連では、密度汎関数法(DFT)プログラムの「DMol3」でアニオン系分子の計算精度を高めるためのDiffuse functionsを導入したほか、4ギガバイト以上のメモリーを使用する大規模計算に対応させた。
DFTに基づいた第一原理平面波・擬ポテンシャルプログラム「CASTEP」では、固体のラマン計算、ダイポールコレクションによる表面の計算、HSE関数による電子材料のバンド構造の計算、TS(トカチェンコ−シェフラー)法の拡張−などの機能強化を実施。最後のTS法の拡張では、パラジウム、カドミウム、イリジウム、白金、水銀、バリウム、鉛、ビスマスといった重い元素に対応した。DMol3ではすでに対応済みだったが、CASTEPでも計算対象が広がったことになる。
DFTに基づくタイトバインディング法プログラム「DFTB+」は半経験的な方法であるため、計算にはパラメーターが必要になる。このため、パラメーター作成ツールが付属していたが、今回の最新版では開発元であるブレーメン大学が用意したパラメーター集「SKFライブラリー」を内蔵して使いやすくした。作成ツールも強化されており、自分で作成したパラメーターセットをライブラリーに追加することも可能。計算対象としては、F軌道の取り扱いが可能になったことも改善点である。
そのほか、マテリアルスタジオにはユーザーコミュニティサイトが用意されており、100種類以上のスクリプト集が公開されている。ユニークなツールも利用できるため、ユーザーは定期的にのぞいてほしいということだ。フォーラムでの議論も活発だという。
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<関連リンク>:
アクセルリス(日本法人トップページ)
http://accelrys.co.jp/
アクセルリス(日本法人のマテリアルスタジオ製品紹介ページ)
http://accelrys.co.jp/products/materials-studio/
CCSnews(マテリアルスタジオ6.0の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2012/1q/2012_1Qacclms60.htm
CCSnews(マテリアルスタジオ5.5の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2010/4q/2010_4Qacclmaterialsstudio55.htm
CCSnews(マテリアルスタジオ5.0の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2009/4q/2009_4Qacclms50.htm
CCSnews(マテリアルスタジオ4.4の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2009/1q/2009_1Qaccelrysms44.htm