TSテクノロジーが計算化学のクイックサービスを正式スタート
ネットショップ方式で手軽に依頼、物性解析4,000円から
2012.11.28−山口大学発ベンチャーのTSテクノロジーは27日、計算化学による解析結果を低価格で手軽に得ることができるサービスを正式に開始した。アマゾンや楽天などのネットショッピングのようなスタイルで、ホームページ上で簡単に依頼することができ、結果は基本的に即日入手可能。同社は設立以来の3年間、詳細な化学反応解析を含むテーマ志向の受託研究・受託計算サービスを提供してきたが、最近では計算化学の裾野の広がりでそうしたニーズが高度化する一方、簡単に計算結果だけを知りたいという要望も増えてきていた。実際のサービス開始で反響が期待される。
今回の新サービスは、理論解析(受託計算)の「クイックオーダー」として実施される。従来のサービスとの違いは、あらかじめ解析メニューが用意されており、同社のホームページ上でネットショッピングのように依頼ができること。費用は計算する分子の大きさや計算内容で異なるが、1件当たり約2万円と安価で、その場でクレジットカード決済(銀行振込も可)ができる仕組みも取り入れている。
ユーザーはまず計算したい分子構造をSMILES表記、MOLファイル形式、CAS番号のいずれかで指定し、秘密保持条項を確認したのち、SSL暗号通信により構造データを送信。基本となる構造最適化計算の計算レベルを選ぶ。この時、計算レベルをおまかせにすることも可能。その後、実際に行いたい物性解析の内容をメニューから選択することができる。
具体的には、全エネルギー計算、紫外線可視光吸収スペクトル(UV-VIS)、振動円二色性スペクトル(VCD)、赤外線吸収スペクトル(IR)、原子点電荷、静電ポテンシャル(ESP)、双極子モーメント・多極子モーメント、分極率/超分極率、HOMO/LUMO解析、旋光度、イオン化ポテンシャル(電子親和力)−の計算が可能。解析結果は、数値やグラフ、画像などそれぞれに適した形式で戻ってくる。計算メニューは随時拡充していく。
VCDスペクトルからは化合物のキラリティを予測できるほか、イオン化ポテンシャルは電子材料開発などに役立つ情報だという。このように、実測が難しい未知化合物やサンプル合成前の基本データの収集目的のほか、バーチャルスクリーニングによる化合物探索、各種スペクトルによる化合物同定、反応性の比較検討、あるいは実験論文に計算データを加えたいといった目的でも気軽に利用してほしいという。
また、オプションメニューとして、解析レポートの製本、計算の生データの提供、解析担当者とのディスカッションなどが用意されている。
ユーザーは、ホームページ上でやりたい項目を選び、「カートに入れる」ボタンを押していくだけ。最終的に「カートの中を見る」と、総計の見積書が表示され、決済方法を選ぶことになる。解析結果の入手が即日でなくてもいい人は、「ゆっくり」のオプションを選ぶと価格が10%割り引きになる。
全体としてネットショッピングのイメージでデザインされているため、解析を依頼する手順は非常にわかりやすい。現在の料金表では、基本となる構造最適化計算が1万2,000円から、それをもとにした各種物性解析はそれぞれ4,000円となっている。価格がはっきりしていることも利用しやすいといえるだろう。
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